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これまでの多価イオンを用いた高エネルギー密度の電池開発は電解液などの材料開発に膨大なコストが掛けられてきた。ただ、幾つかの例外を除けば、金属元素の陽イオン(カチオン)を利用した試みは数多くのハードルに阻まれ、その先へ進むことが難しくなっている。

図12 アニオンが高エネルギー密度蓄電池実現の早道か
図12 アニオンが高エネルギー密度蓄電池実現の早道か
エネルギー密度を現行のリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)よりも飛躍的に高めるための道筋。これまでの試みは大きく、(1)多価イオンで容量を稼ぐ、(2)活物質の多段階反応で容量を稼ぐ、の2種類だった。ただし、(1)にはカチオンのデンドライト問題や活性化エネルギーが高い問題が立ちはだかった。一方、(2)は活物質の構造変化に可逆性が乏しく、サイクル寿命が著しく低い課題に突き当たった。(1)でも(2)でもキャリアをアニオンにすることで、それまでの課題を回避できる可能性が見えつつある。(図:日経クロステック)
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 対して、最近になってまったく新しい指針が見えてきた(図12)。電池内キャリアに陰イオン、より一般にはアニオンを使うことだ。

アニオン(anion)=電解液中でアノード(anode)に引き寄せられる分子または原子のこと。アノードは電子が外部回路に出ていく電極で、アニオンも分子全体としては負に帯電している。原子1個の場合は陰イオンとも呼ぶ。逆に、電子が流れ込んでくるカソード(cathode)に引き寄せられる分子や原子をカチオン(または陽イオン)と呼ぶ。

 アニオンはそれまでのカチオンに比べて、その元素に電子やその他の分子が付加している分、イオン半径が大きく、周囲の物質に及ぼすクーロン力が小さい。つまり活性化エネルギーが低い。デンドライトも生じにくく、これまでカチオンで苦労していた部分を楽々とクリアする。

 こうした点にいち早く注目し、アルミニウム硫黄(Al-S)2次電池でアニオンを採用した試作例も出てきた(図13)。GSアライアンスが開発したセルは充放電による正極のSの容量低下が大きいが、アニオンと直接の関係はなさそうだ。

図13 アニオン型Al-S2次電池が登場
図13 アニオン型Al-S2次電池が登場
GSアライアンスが試作したアニオン型Al-S2次電池セル(a)。正極は炭素材料に硫黄(S)を担持させたもの。負極はAlだが、電池内キャリアはアニオンである(b)。正極の初期容量は活物質当たりで950mAh/gと非常に大きいものの、充放電のサイクル寿命は短い。これは、Li硫黄(Li-S)2次電池などと同様、Sが多硫化硫黄の形で電解液中に溶出することが原因と推定できる。(図と写真:GSアライアンス)
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