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 2022年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震で、鉄道や高速道路など交通インフラにも大きな被害が出た。東北新幹線の高架橋の橋脚が“沈下”した他、東北自動車道や常磐自動車道の路面に大規模な亀裂が生じた。21年2月に同地域で発生した地震の2倍程度の地震動が作用した可能性がある。

東北新幹線の福島—白石蔵王間で損傷した橋脚(写真:JR東日本)
東北新幹線の福島—白石蔵王間で損傷した橋脚(写真:JR東日本)
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損傷した橋脚の直上では軌道の変位が生じた(写真:JR東日本)
損傷した橋脚の直上では軌道の変位が生じた(写真:JR東日本)
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 東北新幹線では福島—白石蔵王間の高架橋で損傷が見つかった。中層梁のある高架橋で、橋脚の根元が沈下するように損壊した。付近の橋脚や中層梁にも、せん断破壊とみられる損傷が発生。コンクリートが剥落し、鉄筋が露出した。損傷した橋脚の直上では、軌道の変位も発生。同区間では、電柱(架線柱)の傾斜や圧壊も起こっている。

 根元に損傷が生じた橋脚の上半分は、鋼板を巻き立てる耐震補強を終えていた。京都大学の高橋良和教授は、「上の方は柱が短いので、せん断ひび割れが生じる恐れが高いとみて、耐震補強をしたのではないか。ただその際に、橋脚自体の耐震性能もチェックしていたはずだ」と話す。高橋教授は、東日本大震災や21年2月の地震の発生後にも、東北新幹線の被害状況などを調査した。

東北新幹線の福島—白石蔵王間で損傷した橋脚。左側の手前から2例目の橋脚では、基部にせん断破壊とみられる損傷が生じている。中層梁には、過去の地震によるせん断ひび割れを補修した跡のようなものが見える(写真:JR東日本)
東北新幹線の福島—白石蔵王間で損傷した橋脚。左側の手前から2例目の橋脚では、基部にせん断破壊とみられる損傷が生じている。中層梁には、過去の地震によるせん断ひび割れを補修した跡のようなものが見える(写真:JR東日本)
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 中層梁には、過去の地震によるせん断ひび割れを補修したとみられる跡が残っている。高橋教授によると、一度補修した箇所がその後の地震で再び傷口を開けることがある。今回の中層梁の損傷も、そうしたケースに当てはまる可能性があるという。その上で、高橋教授は橋脚の損傷について、次のように語る。

 「JR東日本が公開した画像を見る限り、左側の手前から2列目の橋脚は、基部でせん断破壊が起こり、軸方向の沈下と横方向のずれが生じたという印象を受ける。右側の最前列の橋脚は軸方向に沈んでいるように見える。これだけ軸方向に沈んでいることを考えると、せん断破壊による損傷で自重を支えられなくなり、完全に壊れてしまったのではないか」