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 企業が自社サービスに金融機能を組み込む「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」を展開するうえで欠かせないのが、ライセンスホルダーやイネーブラーと呼ばれる「黒子」の存在だ。日本ではライセンスホルダーやイネーブラーとして、ネット銀行やFinTech企業が存在感を高めている。

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 エンベデッドファイナンスには大きく3つのプレーヤーが存在する。自社サービスに金融機能を組み込んで最終顧客に商品・サービスを提供する「ブランド(事業会社)」、銀行などの「ライセンスホルダー」、そしてシステム基盤などの提供を通じてブランドとライセンスホルダーの橋渡し役を担う「イネーブラー」だ。

 本特集の第1回で紹介したヤマダホールディングス(HD)の事例の場合、ブランドがヤマダHDで、住信SBIネット銀行がライセンスホルダーとイネーブラーの両方の役割を兼ねる。証券サービスに進出するセブン銀行のケースでは、セブン銀行がブランド、Finatextホールディングス(HD)傘下のスマートプラスがライセンスホルダーとイネーブラーの役割を担っている。

エンベデッドファイナンスを利用して自社サービスに金融機能を組み込むブランドの例
企業名提携先概要
NTTドコモ三菱UFJ銀行2022年内に取引状況に応じて共通ポイント「dポイント」を付与するデジタル口座サービスを提供する計画。独自の住宅ローンや資産運用分野での連携も検討。両社で合弁会社を設立する予定
SHOWROOMGMOあおぞらネット銀行ライブ配信者が視聴者から受け取ったギフトの即時換金が可能に
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)住信SBIネット銀行2021年3月から、グループ会社のTマネーを通じて、約7000万人のT会員向けに「T NEOBANK」の提供を開始。銀行取引に応じて共通ポイント「Tポイント」を付与
セブン銀行スマートプラス2022年夏にセブン銀行の口座保有者向けに、上場株投資などのサービスを提供する計画
日本航空(JAL)住信SBIネット銀行2020年4月から、グループ会社のJALペイメント・ポートを通じて、「JAL NEOBANK」の受け付けを開始。銀行取引に応じてマイルを付与
パーソルテンプスタッフみんなの銀行2021年10月、みんなの銀行内に「テンプスタッフ支店」を開設。登録スタッフは同行のスマホアプリ経由で入出金などの取引が可能に
ピクシブみんなの銀行2021年9月、みんなの銀行内に「ピクシブ支店」を開設。ピクシブが運営するサービスを利用するクリエーターやファンは同行のスマホアプリ経由で入出金などの取引が可能に
ヤマダホールディングス住信SBIネット銀行2021年7月から、グループ会社のヤマダファイナンスサービスを通じて、「ヤマダNEOBANK」の提供を開始。家具や家電の購入資金を組み込んだ住宅ローンを提供

住信SBIネット銀行は大手企業との提携に活路

 銀行分野において、ライセンスホルダーやイネーブラーとして存在感を高めているのが、住信SBIネット銀行とGMOあおぞらネット銀行だ。

 住信SBIネット銀行は2020年4月に日本航空(JAL)のグループ会社であるJALペイメント・ポートと「JAL NEOBANK」の提供を始めるなど、国内エンベデッドファイナンス市場で先行してきた。ヤマダHDやJALのほか、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)や高島屋、第一生命保険といった大手企業との提携も成し遂げ、存在感を増している。

 「我々はシステムベンダーではなく、提携先と金融サービスを一緒につくるアライアンスパートナーだ」。同行の服部浩久執行役員はこう強調する。預金や振り込み、外貨預金といった「銀行機能」を提供するだけでなく、マネーロンダリング対応なども提供してブランドを包括的に支援する。

 このNEOBANK事業に同行は経営資源を重点的に振り向ける。予定では2022年3月24日に新規株式公開(IPO)し、市場から調達した資金を同事業に振り向ける方針だった。ロシアのウクライナ侵攻や最近の市場動向などを踏まえて上場を延期したものの、今後も同事業に重点的に資金を投じていく考えは変えていない。