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 世界では毎年3億1700万件もの事故が職場で発生し、毎日6300人、年間では230万人もの人々が労働災害または仕事に関連した疾病により死亡している。国内に目を転じてみよう。厚生労働省のデータによると、2020年の産業現場における休業4日以上の死傷者数*1は13万1156人で、2002年以降で最多となっている。このような日々の不幸に関する人的コストは莫大であり、貧弱な労働安全衛生の慣行による経済的負担は、世界全体の国内総生産の4%に相当するといわれている。

*1 労働安全衛生規則様式第23号により、4日以上の休業を余儀なくされた労働者または死亡した労働者があった災害は速やかな報告が義務付けられており、この報告によって判明している死者数を指す

安心・安全な労働環境が企業の価値を高める

 安全で健康な職場の労働環境・条件を整え、そうした損失を防ぐことは、企業にとって最も大切な資産である従業員の体と精神の健康バランスを守ると共に、従業員のモチベーション向上や働きがいのある仕事の創出につながる。それが企業のリスク回避、製品の品質・サービス向上をもたらし、ひいては顧客満足度や企業価値の向上にもつながる。良好な循環が社会・経済・企業経営に大きな恩恵をもたらすのだ。予防施策のROI(投下資本利益率)についての国際的な調査によると、安全と健康に1米ドルを投資した場合、2米ドル以上もの経済効果があることが判明したという*2

*2 2013年発行の『DGUV Report 1/2013e: Calculating the International Return on Prevention for Companies: Costs and Benefits of Investments in Occupational Safety and Health』の調査による。国際社会保障協会(ISSA)、ドイツ法定災害保険(DGUV)、およびエネルギー・繊維・電気・メディア製品セクターのドイツ同業者労災保険組合(BG ETEM)が19カ国、337企業に聞き取り調査した。

 そこで、安心して働ける健康的な職場環境を整えようという取り組み「VISION ZERO」(VZ)が、いま世界で進められている。VISION ZEROは、あらゆる産業の職場や労働現場を対象に、安全(Safety)、健康(Health)、ウェルビーイング(Well-being)の3つの視点から、事故や疾病、職業病などを未然に防ぎ、人が身体的・精神的・社会的に“良好な状態”で働ける環境を構築しようという活動。企業が健康的な労働環境を整備するVISION ZEROに今すぐ取り組めば、雇用者と従業員そしてビジネスにとって大きなプラスになる。

VISION ZEROの概念
VISION ZEROの概念
安全(Safety)、健康(Health)、ウェルビーイング(Well-being)の3つの視点から、事故や疾病、職業病などの防止を目指す。(出所:ISSA)