大学がIT人材育成の新たな学部や研究科を設立、卒業生が巣立ち始めている。既存の情報系学部とは異なるデータサイエンス学部やAI研究科では何を学ぶのか。滋賀大学、横浜市立大学、武蔵野大学、立教大学の取り組みを紹介する。
2022年4月、横浜市立大学のデータサイエンス学部を卒業する1期生が社会人になる。そのうちの1人の就職先は、就職サービスなどを手掛けるマイナビ。同社がスペシャリスト採用として設けるITコース内の「WEBスペシャリスト/データサイエンティストコース」での採用だ。
選考に当たってはデータサイエンス領域の基礎知識、プログラミングや分析ツール活用の経験などを評価。さらに「スキル面だけではなく、データ活用に基づいて次のビジネスの一手を導き出せる人材かどうかを重視した」と同社の谷本健次人事統括本部採用部部長は話す。同コースに採用された学生は入社後、データエンジニアやデータサイエンティストとしての配属がほぼ確定している――。
企業に即戦力人材を供給するデータサイエンス学部などはどんな学びを提供するのか。各大学の取り組みを見る。
滋賀大学
4割が文系学生 企業の実データで研究
「滋賀大学のためだけではなく、日本が遅れているデータサイエンス分野をなんとかしたくて手を挙げた」。2017年に日本の大学で初となるデータサイエンス学部を設置した滋賀大学の竹村彰通データサイエンス学部長はこう話す。竹村学部長は「日本ならでは」のデータサイエンス教育の必要性を訴える。日本では米国などに比べてビジネス部門にデータサイエンスの考え方が浸透しておらず、データ分析をビジネスに応用する際、データサイエンティストが担う範囲が広い。「統計、コンピューターサイエンスなどを用いてビジネス上の課題を解決できる人材を育てる必要がある」(竹村学部長)。
データサイエンス学部の入学定員は1学年当たり100人、在学生の内訳は高校で数IIIを履修した理系学生が6割、文系学生が4割だ。数学の授業においては微分法や積分法など数学IIIの内容から学び直し、その上で2年生時に統計検定2級レベルを目指すなど、文系学生へのフォローアップを組み込んだ科目構成としている。「学部としても文系学生を歓迎する姿勢を打ち出している」(竹村学部長)。学習カリキュラムでは情報や統計関連、プログラミングなどに加え、経済学や経営学など文系の科目も履修する。データサイエンスの現場において分析対象となるデータは購買やWeb行動履歴など、人間の行動データが多い。「人間に関する理解も必要で文系的なセンスが役に立つ場面も目立つ。デーサイエンティストとして活躍している文系出身者は多い」(竹村学部長)。