武蔵野大学
グループワークが主軸 成績は成果物で評価
武蔵野大学は2019年4月にデータサイエンス学部を、2021年4月に大学院データサイエンス研究科(修士課程)を開設した。情報系学部の設立を検討する中で、今学ぶべきはデータサイエンスやAI(人工知能)との判断からだ。同大学のデータサイエンス学部の特徴は自学のeラーニングを交えつつ、ほぼ全ての授業をグループワーク・演習形式で進める点だ。実践力を磨くことに重きを置く。同学部の中西崇文データサイエンス学科長は目指す人材像について「実践的なデータサイエンスを扱い、自分が関わる分野の課題を解決していく力を持つ人材」と定義する。
同学部はデータサイエンスの歴史や将来展望、基礎的な知識、事例などを学ぶ「データサイエンス学」やAIのデータ分析への適用などについて学ぶ「人類と人工知能」をはじめとする専門科目を設置。数学やプログラミングも基礎知識を学びつつ課題に対してグループワークでアウトプットする形式を採用した。学んだ数式やプログラミング知識で成果物を作り、内容を可視化しながら理解させる。中西学科長はこの授業形態について「数学などは知識習得が主になりやすい科目だが、プログラミングの実践と織り交ぜながら、そのときに使うべき領域を学んだ方が身に付く」と狙いを明かす。
学生は毎回の授業でグループや個人に与えられる課題を提出する。全教科で期末試験を設けておらず、成績は提出した成果物で評価する。データサイエンス学部設立に関わった学部事務課の熊谷多加史参事は「学生の授業時間以外の学習時間は月100時間に上る。ハードだが確実に実力をつけさせるカリキュラム構成としている」と自信をのぞかせる。既に国内外の学会で受賞経験を持つ在学生が複数存在し、一定の成果が出ている実感があるという。
1年生の後期からは「未来創造プロジェクト」と呼ぶ実践型学習に取り組む。学生は研究グループ、企業との共同研究や官公庁との委託研究に携わる。2年生の後期からは「ソーシャルイノベーションコース」「AIクリエーションコース」「AIアルゴリズムデザインコース」からメインとサブの2コースを選択し専門科目で学習を深める。並行して企業と連携したインターンシップも始め、本格的に実データを使ったプロジェクトの経験を積む。
大学院データサイエンス研究科でも実践型の学習を継続する。データサイエンス研究科の石橋直樹教授は大学院での学びについて「データサイエンスははやり言葉になっているが、ビジネスデータをコンピューターで処理すればデータサイエンスと言えるわけではない。学問をベースにした正しいデータを実社会に生かす『科学者』を育成する」と話す。学生は「セマンティックコンピューティング・AI応用」「データサイエンスビジネス」など8つのプロジェクトのどれかに属する。社会人学生は所属する企業の課題を持ち込んで研究課題とするケースも多いという。同大学院は「データサイエンス分野のプロフェッショナルとなる人材を育成する」として2022年4月に博士後期課程の開設も予定している。