デジタル人材不足の中、IT企業がIT教育への関わりを深めている。学校の情報教育を先取りする形で多様な学びを提供している。新たなIT教育はITの「つくり手」と「使い手」の溝を埋めると期待される。
2022年2月8日、神奈川県茅ヶ崎市のアレセイア湘南高等学校の1年生が花王、KDDI、スノーピークビジネスソリューションズ、ソフトバンク、日本航空から参加した審査員を前に、ある発表に臨んでいた。各企業に訴えたいSDGs(持続可能な開発目標)のテーマを生徒が選び、自分たちの考えについてデータを活用して各企業に提案、各企業はそれを審査し表彰する――。BI(ビジネスインテジェンス)のクラウドサービスを手掛ける米ドーモの日本法人が提供した「Domo for Good:未来のBI Leaderを育てよう」プロジェクト最終日の一幕だ。
プロジェクトに賛同し、審査員として参加した花王の佐藤満紀DX戦略推進センターカスタマーアナリティクス室長は「データだけでは(相手を)説得できないし、(相手にも)納得してもらえないが、生徒たちはデータを様々な形に成形し、きちんと理解し、示したい状況に置き換え、納得できる形にして提示してロジカルにプレゼンしていた」と評価する。
生徒がBIツールを活用
プロジェクトを提供したドーモは発表会の場を用意しただけではない。発表に先立ち、2021年10月からアレセイア湘南高等学校で同社の社員が「明確なGoal設定と可視化の重要性」「伝えると伝わるの違い~数字の考え方、どのように相手に数字を見せると正しく伝わるのか~」「データの力と企業での活用事例」といったテーマの授業を展開。さらにデータ分析のために同社のBIクラウドサービスのインスタンスを生徒が利用できるようにしたり、プレゼンテーションをつくる際に同社の社員がサポートしたりした。
ドーモの川崎友和プレジデント ジャパンカントリーマネージャーはプロジェクトを始めた理由として「データ分析ができる人材が増えることは、(データ分析ツールを提供する)会社のビジネスにも良い影響を与えるということもあるが、(データ活用・分析は)楽しいことであり、もっと慣れ親しんでほしい」との思いがあったと語る。生徒がデータ分析に取り組む様子について「高校生同士でアンケートをとってそれをデータ化したり、グラフ化し、データを可視化したりしていた。こういったビジネスがあるんだ、こういう働き方があるんだということを知ってもらえたと思う」と話す。