一般車両を通しながらトンネルを掘削して拡幅する――。そんな難題に取り組む現場が千葉県君津市にある。車両の通行路を複数回変えるなど施工手順を工夫。作業スペースが限られるなか、コンクリートの吹き付けと支保の建て込みの機能を兼ねた重機を導入し、手待ち時間を減らした。
千葉県君津市の内陸部を東西に貫く国道465号を走っていると、トンネルの中に一回り小さい門型断面のトンネルが出現する。千葉県君津土木事務所上総出張所が発注し、飛島建設と伊藤土建(君津市)による特定建設工事共同企業体(JV)が施工する蔵玉(くらだま)トンネルの拡幅工事の現場だ。
一般車両は、青いLED照明が取り付けられている幅3.5m、高さ4.0mの門型断面のトンネル内を交互で通行する。実はこのトンネルは、その真横で進む蔵玉トンネルの拡幅工事から安全を確保するプロテクターとしての役目も担う。
トンネルの拡幅工事は、通行止めで実施するのが一般的。だがトンネルの周囲には迂回路がないため、県は一般交通を確保しながら拡幅する「活線拡幅」の採用を決めた。
拡幅の手順は以下の通り。まずは、幅約6m、高さ約5mの既設トンネルにプロテクターを設置して、側面にモルタルを充填。プロテクターの外周を掘削しながら支保を建て込む。
続いて、拡幅した空間に新しいプロテクターを設置して一般車両の通行路を変更してから、先に設置したプロテクターを撤去。プロテクターで覆っていた箇所を掘削して支保を施工する。
その後、プロテクターを中央に移動し、再度通行路を変更。防水シートや覆工コンクリートを施工した後、最後に舗装や排水溝を1車線ずつ施工して完成だ。