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愛知、岐阜、三重の3県を環状に連結する東海環状自動車道の建設現場で、陸上部においては国内最長クラスとなる鋼床版箱桁の送り出し工事が進む。総重量3700tの桁を、カーブを描くように動かす必要があり、作業の難易度はかなり高い。2022年3月下旬と4月中旬に実施した送り出し工事の内容を中心に、動画を交えて紹介する。

 「クレーンで吊っているわけでもないのに、橋が徐々に移動して架かっていく」──。岐阜県海津市に住民の話題を集めている現場がある。国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所が発注した東海環状自動車道の津屋川橋鋼上部工事の現場だ。

タイムラプスで送り出しの様子を撮影した。900倍速。2022年3月22日撮影(動画:大村 拓也)
桁の送り出し中。2日間で約130mを移動させる。2022年3月22日撮影(写真:大村 拓也)
桁の送り出し中。2日間で約130mを移動させる。2022年3月22日撮影(写真:大村 拓也)
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 橋を架ける場所は津屋川と養老鉄道などが交差するため、地上に大型重機を設置できない。そのため、現場の後方ヤードで鋼桁を地組みして、橋脚の上を移動させていく「送り出し工法」を採用している。この現場では5回に分けて送り出しを進める計画だ。

送り出し作業のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
送り出し作業のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
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 後方ヤードのスペースは限られているため、1回で桁を地組みできる長さは100m前後だ。回を重ねるたびに桁を継ぎ足すことになるため、送り出しが後になるほど鋼桁の重量は増す。

 筆者は2022年3月下旬、4回目の送り出しのタイミングで現場を訪れた。延長427mの桁と両端に取り付けた100mの手延べ機などを、130.8m前方に動かす。ゆっくりではあるものの、総重量3700tの巨大な構造物が動く様子は圧巻だ。

写真上が4回目の送り出しの前で、下が後。写真奥に向かって送り出した。ドローンで撮影(写真:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
写真上が4回目の送り出しの前で、下が後。写真奥に向かって送り出した。ドローンで撮影(写真:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
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 受注者のIHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体(JV)で現場代理人を務める佐々木智弘所長は「摩擦を切りながら動かしている」と説明する。

 橋脚の上には桁を支える複数のジャッキを設けている。中でもスムーズな送り出しを可能にするのは、IHIインフラシステムJVが提案した2つの装置から成るローラージャッキだ。1つ目は「エンドレス滑り装置」。桁と直接接触し、桁の移動に合わせて走行ベルトが回転する。

送り出し設備のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
送り出し設備のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
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エンドレス滑り装置。緑色の部分が回転部(写真:大村 拓也)
エンドレス滑り装置。緑色の部分が回転部(写真:大村 拓也)
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 そして2つ目が高さ調整ジャッキだ。「鋼桁が重いため、エンドレス滑り装置の下に高さ調整ジャッキを2台設置している」(IHIインフラシステムJVの佐々木所長)。これらで桁の反力を受け持たせて摩擦を減らしながら、滑らせるように移動させることに成功した。