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 千葉県南房総市の山間部で、アジア初の会員制ドライブコースの建設工事が佳境を迎えている。フェラーリやポルシェといったスーパーカーが「走りを楽しむ」ために東京ドーム約8.5個分の広さを開発。一般道ではあり得ない18.65%の急な縦断勾配や内側の曲線半径が10mの急カーブなど“規格外”の道路を、前田建設工業がグループの総力を挙げて施工に臨んでいる。

ドライブコースの全景。全長3.549kmのコースの他、宿泊などが可能な施設(オーナーズパドック)やクラブハウス、ガレージ、ヘリポート、調整池など様々な施設を整備する。2022年11月22日に撮影(動画:大村 拓也)

 東京都心から車で約1時間。東京湾や富士山を望める千葉県南房総市の山間部で、開発面積が39.2ヘクタールに及ぶ大規模な造成工事が佳境を迎えている。フェラーリやポルシェといったスーパーカーを思う存分に運転できる、アジア初の会員制ドライブコースの建設現場だ。

 高級車の販売などを手掛けるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド(東京・港)のグループ会社のコーンズ富浦(千葉県南房総市)が工事を発注。インフロニアホールディングス傘下の前田建設工業が受注し、グループ会社の前田道路や前田製作所と協力して施工に臨んだ。

ドライブコースの北側部分。舗装工事と並行してクラブハウスや宿泊施設の建設を進めている。切り土と盛り土の量を一致させて現場内外における土の搬出入をゼロにした(写真:大村 拓也)
ドライブコースの北側部分。舗装工事と並行してクラブハウスや宿泊施設の建設を進めている。切り土と盛り土の量を一致させて現場内外における土の搬出入をゼロにした(写真:大村 拓也)
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 ドライブコースは1周3.549kmで、高低差は86.5mに上る。約800mの直線に加え、自然の沢地形を生かした最大18.65%の縦断勾配、内側の曲線半径が10mの急カーブなど特徴的な線形を有する。舗装工事では急勾配の施工を実現しつつ、快適な運転を可能にする平たんな路面を確保する必要があった。

 一般に、アスファルト舗装を施工できる縦断勾配は14%ほどが限度だ。そこで舗装工事を担当する前田道路は、事前に約4000tの砕石を用いて自社の機械センターに縦断勾配20%の試験場を造成。急勾配や急カーブでのアスファルトフィニッシャーなど舗装重機の施工性を確認した。

舗装工事の様子。コースからはみ出た車が走行する「ランオフエリア」を施工している。アスファルトフィニッシャーを2台並走させて路面の平たん性を高めている(写真:大村 拓也)
舗装工事の様子。コースからはみ出た車が走行する「ランオフエリア」を施工している。アスファルトフィニッシャーを2台並走させて路面の平たん性を高めている(写真:大村 拓也)
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 敷設後の合材を締め固める転圧作業にも課題があった。鉄輪を装備したローラーは急勾配でスリップしやすいからだ。通常の舗装工事と同じようにローラーを振動させると、合材が偏ってしまうリスクもあった。

 前田道路は対策として、ゴム輪を取り付けたコンバインドローラーを使用。仕上げ用に無振動型のローラーも手配した。

 平たん性の確保では、路面の凹凸を通常より厳しく管理した。一般的な舗装は長さ3mのプロフィルメーターを用いて凹凸の標準偏差が2.4mm以下になるように管理する。この現場では、0.7mmを目標値に定めた。