全2321文字
PR

 2025年度からの導入に向けて、仕様の策定が進められている次世代の電力メーター。資源エネルギー庁が2020年9月から2022年3月にかけて開催した「次世代スマートメーター制度検討会」による議論の結果、家庭向けの電力メーターと利用者側の宅内ネットワークをつなぐ「Bルート」に2.4GHz帯の無線LANを採用する。

 スマートメーターの通信路は、電力やガス事業者側でメーターを管理する「メーターデータ管理システム(MDMS)」とつながる通称「Aルート」と、住戸やビル内のネットワークにつながるBルートの2つがある。Bルートは、スマートメーターの計測値を利用者側に送信する通信路だ。Bルート経由で計測値を受け取ったエネルギー管理システム(EMS)が、消費電力の見える化や、電力の供給状況に応じて利用者の電力使用を制御する「デマンドレスポンス」などに役立てる。家庭向けのEMSを「HEMS」、ビル向けのEMSを「BEMS」と呼ぶ。

住戸とつながる通信ルートは「Bルート」
住戸とつながる通信ルートは「Bルート」
(出所:第13回スマートメーター制度検討会資料(経済産業省)を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]

Wi-SUN対応のコストが活用のハードルに

 現行の電力メーターでは、Bルートに使える無線通信規格は「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」だけだ。Wi-SUNはIoT(インターネット・オブ・シングズ)向けに開発された、920MHz帯の電波を使用する規格である。

 現行メーターでWi-SUNが採用された主な理由は「つながりやすさ」だ。スマートメーターは一般的に、屋外に設置される。このため、スマートメーターと宅内ネットワークの間には、壁などの障害物があることが多い。Wi-SUNが使用する920MHz帯の電波は、無線LANが使用する2.4GHz帯や5GHz帯の電波に比べて到達性が高く、障害物の影響を受けにくい。

 現行メーターへの採用が決まった当初、「HEMS機器や家電製品などがWi-SUNに対応すると期待されていた」(Wi-SUN関連の事業者)。消費者の省エネに対する意識の高まりを受けて、国によるHEMS導入促進事業などが実施されたからだ。

 しかし実際には、Wi-SUN対応のHEMS機器や家電製品はほとんど普及していない。Wi-SUNは物理層に「IEEE 802.15.4g」、MAC層には「IEEE 802.15.4/4e」という規格を使用しており、無線LANとは仕様がまったく異なる。さらに上位のプロトコルも異なる部分が多く、無線LANからの転用はほとんどできない。

 Wi-SUNでは無線LANのハードウエアやソフトウエアの資産が使えないため対応コストが高い。これがBルートの活用を妨げるハードルの1つになったとみられる。パソコンや無線LANルーターをWi-SUN対応にするUSBドングルなども製品化されたが、ほとんど普及しなかった。こうして現行メーターのBルート機能は、あまり使われることがない「宝の持ち腐れ」になってしまった。