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 電力メーターによる検針値は、「Aルート」を経由して電力事業者に送信される。電力メーターは住宅やビル、工場などのほとんどに設置されるので、いわば全国の隅々にまで張り巡らされたネットワークを形成する。次世代の電力メーターでは、この通信インフラを電力メーターの検針以外にも活用する。

新たな通信ルートを追加

 電力メーターの通信ルートは、電力事業者につながるAルートと、住宅やビルのエネルギー管理システム(EMS)につながる「Bルート」がある。次世代電力メーターでは、この2つに加えて「IoTルート」という第3の通信ルートが設けられる。電力以外のメーターとつなげるための通信ルートだ。

電力以外のメーターとつながる「IoTルート」
電力以外のメーターとつながる「IoTルート」
(出所:第8回 次世代スマートメーター制度検討会資料「次世代スマートメーター制度検討会取りまとめ(案)(資源エネルギー庁)」)
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 IoTルートでつながるメーターは2種類ある。「特例計量器」とガス/水道メーターだ。

 特例計量器は2022年4月1日に始まった「特定計量制度」に対応するメーターだ。従来の「計量法」に基づく電気計量制度では、厳格に定められたルールに基づく検定を合格したメーターを備えていないと、電力を取引できなかった。しかしここにきて家庭用の太陽光発電システムや電気自動車(EV)、大型蓄電池といった「分散型電源」の利用が増えている。こうした機器が扱う電力を取引するために、計量法の緩和が求められた。その結果が特定計量制度である。

 特定計量制度は計測精度などが一定基準を満たしていれば、計量法の検定を受けていないメーターでも電力の取引に使えるようにする制度だ。この新制度に基づくメーターが特例計量器だ。これにより、例えば「EVに蓄えた電力を取引する場合に充放電設備の計測値を使いたい」「第三者が各家庭の屋根に設置した太陽光発電システムから電力を購入する場合に、パワーコンディショナー(太陽光発電による直流電力を家庭で使用できる交流に変換する装置)の計測値を使いたい」といったニーズに対応できる。

「特定計量制度」の概要
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「特定計量制度」の概要
(出所:資源エネルギー庁のWebページ「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ④次世代の電力プラットフォームもにらんだ法改正」)

 次世代電力メーターでは、特例計量器の30分値(30分単位の計測値)をIoTルート経由で収集し、Aルートを介して電力事業者側のメーターデータ管理システム(MDMS)に送信する。つまり、特例計量器の計測値の収集を、電力事業者が肩代わりする。MDMSに集めた計測値は、特例計量器の事業者などが活用できるようにデータをやり取りする仕組みも用意する。

特例計量器の計測値をIoTルートで収集する大まかな仕組み
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特例計量器の計測値をIoTルートで収集する大まかな仕組み
(出所:第8回 次世代スマートメーター制度検討会資料「特定計量(IoTルート)運用ガイドライン(案)」)

 次世代電力メーターと特例計量器は「無線端末」と呼ぶゲートウエイ機器で結ぶ。無線端末は特例計量器の計測値を蓄積して電力メーターに送る機能や、通信プロトコルの変換機能などを備える。特例計量器と無線端末の間は有線LANまたは無線LANで接続する。無線端末と電力メーターは、無線通信規格「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」の仕様の1つである「Wi-SUN Enhanced HAN(Home Area Network)」で通信する。Wi-SUNは、現行の電力メーターのBルートにも使われているため、電力メーターへの実装が容易であるという。