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 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。エルピーダの破綻から10年、ここ数年関わっていた中国・紫光集団を2021年末に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況、日本の半導体産業再興に向けた課題などについて、もろもろ語ってもらった。 今回は前回に引き続き、中国の半導体製造技術の現状と、彼らが世界に追いつけない理由を聞いた。(聞き手は小柳建彦)

質問

 中国で半導体生産が本格的に始まったのは2000年代初頭。日本、台湾、韓国のメーカーが相次いで合弁工場を建設し技術移転を進めました。中芯国際集成電路製造(SMIC)のファウンドリー工場もこの頃立ち上がっています。習近平(シー・ジンピン)指導部が「中国製造2025」を打ち出したのは7年前の2015年5月です。国を挙げての潤沢な投資を始めて7年が経過して、それでもまだ世界の先端をキャッチアップできていないのはなぜでしょう。

坂本さんの答え

 一言で言うと半導体の先端技術開発を引っ張っていく人材が育っていないのです。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
(写真:加藤康)

オペレーションと先端プロセス開発は全然違う

 紫光集団にしろ、長鑫存儲技術(CXMT)にしろ、SMICにしろ、台湾などで工場のオペレーションをやっていた技術者が、半導体製造プロセスの技術開発をやっているんです。DRAMでもNANDフラッシュメモリーでもそうです。でも、本当に最先端の半導体を自分たちで造りたいなら、世界大手で半導体開発をやっていた人材がいないと無理だと思います。先端の半導体製造プロセスの開発はオペレーションとはスキルセットが全然違うんです。そういう人材がいないから、これまであれほどおカネをかけてもなかなかうまくいかないんだと思っています。

 一方でそのような開発ができるコア人材は(世界的にも)ごくわずかしかいません。本当に頭を使って、どんな製品をどうやって造るか、決めきれる人材は世界でも少ないのです。かつては韓国サムスン電子でさえ日本からそういう人材を採っていました。一方で彼らのような人材が10人もいれば、きちんとした半導体製造プロセスが構築できます。かつてのエルピーダでもコア人材は10人くらいでした。今のメモリーメーカーの多くも同じようなものだと思います。

 中国の大学や大学院で勉強してきて知識や頭脳として優秀な人はたくさんいるんです。でも、いざ新しい世代のチップを造ろうというときに、細かくスペックを決められない。実際に自分で考えたスペックで造ってみて成功したり失敗したりといった経験を積んでいる人でないと、新しい半導体向けのスペックは決められません。学校で勉強してきただけの人にはとても無理なんです。

 だから世界のメモリー大手で開発や設計、プロセス設計をやってるコア人材の多くは40歳台、50歳台だと思います。経験の蓄積がどうしても必要な仕事だからです。