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 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。エルピーダの破綻から10年、ここ数年関わっていた中国・紫光集団を2021年末に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況、日本の半導体産業再興に向けた課題などについて、もろもろ語ってもらった。 今回は米中経済摩擦が、中国の半導体産業にもたらしている深刻な影響を聞いた。(聞き手は小柳建彦)

質問

トランプ政権時代に激化した米中経済摩擦が台湾などからの中国への人材の移動にも影響を及ぼし、中国への技術移転がより難しくなっている、というのは前回のお話でした。米国はそれだけでなく、米国の研究機関や企業が知的財産を持っている製造装置、設計ソフトなどの要素技術を第三国が制裁対象の中国企業に輸出することも禁止しましたね。バイデン政権に代わってもこの制裁は続いています。こうした技術移転の制限は中国の半導体産業にどんな影響を及ぼしていますか。

坂本さんの答え

 中国への技術移転を封じる米国の制裁はとても効いています。今中国の半導体業界にとって大問題となっているのがEUV(極端紫外線)露光装置(以下、EUV)が入手できないことです。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
(写真:加藤康)

オランダASMLが中国向け輸出を自主停止

 EUVを作れるのは世界でオランダのASMLただ1社のみです。つまりオランダ製なのですが、米国の大学や企業などの研究開発の成果や、彼らが知的財産を持っている技術がかなり使われています。

 米国技術の割合が厳密に制裁基準に抵触する割合になっているかは微妙なのですが、外交的な配慮もあってオランダ政府とASMLは中国へのEUVの輸出を自主的に止めています。米中関係は緊張が続いており、中国から見るとこの先いつになったらEUVを入手できるようになるのか見通しが全く立ちません。