全1909文字
PR

 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。エルピーダの破綻から10年、ここ数年関わっていた中国・紫光集団を2021年末に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況、日本の半導体産業再興に向けた課題などについて、もろもろ語ってもらった。 今回は中国政府が掲げる半導体自給率の目標と戦略転換について聞いた。(聞き手は小柳建彦)

質問

 米トランプ前政権が先端半導体技術の中国への移転規制を始めてからすでに2年たちました。習近平(シー・ジンピン)指導部が15年から掲げる「2025年までに半導体の自給率を7割に上げよう」という目標の達成はかなり難しくなったのではないですか。

坂本さんの答え

 2021年の中国の半導体自給率は15%程度だったようです。しかもそのうち9%が外資系の工場が作ったものです。つまり純粋な中国企業が作った半導体は総需要の6%しかありません。「2025年までに自給率7割」の目標達成はもう100%不可能でしょう。自給率をどう定義しようと無理です。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
(写真:加藤康)

戦略転換を始めた中国指導部

 中国指導部もそれは自覚していて戦略を転換しつつあるようです。やみくもに国産半導体の量を増やすのではなくて、性能と価格で国際競争力のある半導体を作るプロジェクトに資金や人材を集中していく戦略を打ち出しています。

 具体的にはDRAMは長鑫存儲技術(CXMT)、NANDフラッシュメモリーは長江存儲科技(YMTC)にファブ(工場)を集約する。それ以外にはしばらくファブの新設を認めない。両社のファブが十分な性能のチップを低コストで作れるようになったら、両社による工場新設や他社の参入を認める方針のようです。それは正しい戦略だと思います。

 ただ中国の人はすぐにできないと気が済まないようなところがあってどうしても今できることをやろうとします。だからCXMTは何世代も前の技術で作れるものを作る方向に走ったわけです。しかし古い技術でやっていると何年たっても先端に近づきません。結局遠回りになってしまいます。