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 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。エルピーダの破綻から10年、ここ数年関わっていた中国・紫光集団を2021年末に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況、エルピーダメモリの躍進から破綻までに起こったことなどについて、もろもろ語ってもらった。 今回は日本の半導体産業再興に向け政府の支援がどうあるべきかについて坂本氏の考えを聞いた。(聞き手は小柳建彦)

質問

 海外を見ると、半導体産業の国際競争における国家と市場の役割分担について考えさせられます。日本の半導体産業の縮退には、国の失策が少なからず影響しています。日本が半導体産業復興を本気で目指すなら、国はどんな役割を果たすべきでしょうか。

坂本さんの答え

 アメリカ、ヨーロッパ、韓国、台湾、中国のどの地域と比べても、日本政府の半導体産業支援の規模は圧倒的に小さくなってしまいました。これでは日本で半導体事業をやっている限り、同じ土俵で国際競争を戦えません。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
(写真:加藤康)
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各国が兆円規模の支援を競うなか、日本は6000億円

 これまで韓国サムスン電子(Samsung Electronics)や台湾積体電路製造(TSMC)の技術や経営の強さを何度かお話ししましたがもう1つ、日本メーカーに比べて彼らが有利な点があります。それが国の支援の手厚さです。

 今各国・地域が打ち出している半導体産業強化への補助金をみると、アメリカは3年間で6兆円弱出すといっています。ヨーロッパは17兆円を10年間で補助するという。中国は20兆円を10年間で投資する。韓国に至っては10年間で50兆円も補助するといっています。台湾もインフラや用地、税制で手厚く半導体工場を支援してきました。これらに対して日本は今回、TSMCが熊本につくる新工場などに「6000億円を出す」といっているわけです。

 ここまでで何度か申し上げたように、半導体産業の復興を目指す戦略の第一歩に工場をつくろうというのは、そもそも順番が違いますし、賢い税金の使い方だとは思いません。

 ですがその一方、政府が本気で日本を先端的な半導体の製造立地にしたいのなら、この程度の投資の規模や支援の単純さではとても海外の企業と勝負になりません。国家丸抱えで産業を育てるという考え方にくみしたくはありませんが、海外の現実がこうなっている以上、日本政府ももっと覚悟を決めて投資・支援していくべきではないでしょうか。