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 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。エルピーダの破綻から10年、ここ数年関わっていた中国・紫光集団を2021年末に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況やかつてのエルピーダの経営などについて、もろもろ語ってもらった。最終回の今回は日本の半導体産業再興に向けた人材育成や人材活用のアイデアについて聞いた。(聞き手は小柳建彦)

質問

 日本の半導体産業が縮退してからかなり時間がたちました。当然、大学で半導体関連技術を学ぼうという学生も少なくなり、若手人材が枯渇しているのではないかと心配です。人材の育成についてはどんな考えをお持ちですか。

坂本さんの答え

 実は日本の大学には、半導体関連分野を勉強するために来日した海外留学生がいます。そもそも先端技術の競争力を高めるには人材の国際化は欠かせません。留学生の活躍の場を積極的に広げて人材育成の強化につなげていくべきです。

坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
坂本幸雄(さかもと・ゆきお)氏
(写真:加藤康)
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日本に来た留学生、国際人材のプール活用を考えよ

 材料科学や化学、電子工学、コンピューター科学など、半導体を造るのに必要な専門分野は多岐にわたっており、日本の大学を全部合わせれば、ほぼほぼ全般をカバーしています。実際、ベトナム、インド、中国など、色々な国からそういう学科や研究室を目指して留学生が来ています。その卒業生の多くをどこが雇っているかというと、マイクロンメモリジャパンなんです。日本企業はすぐに頭を切り替えて、この国際人材のプールを生かすことを考えるべきです。

 アメリカのトップ半導体メーカーの人材は多国籍で、それが競争力の源泉になっています。逆に日本企業の最大の弱点の1つが人材の多様性の欠如です。電機業界などの開発部門は、おおむね日本人の男性が大多数を占めている。これからはそのワナに陥らないよう、せっかく日本へ留学に来てくれた人材を最大限に活用する態勢を敷くべきです。

 産業技術総合研究所(産総研)や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)といった公的研究機関にも先端技術を扱っている人材がいます。そのなかで、実業への応用に近い部分を研究している人材は新しく先端的な半導体企業をつくれば活躍の場ができると思います。

 経験知がものをいう先端ロジック半導体の設計や微細加工プロセスの開発ではベテランからの技術伝承が必要です。そこで、かつて世界的に競争力があったロジック半導体の設計やプロセス開発、新製品の企画・開発などを担っていた優秀な人材をもう一度呼び寄せる努力をしてみたらよいと思います。

 こうした人材は既に方々に散らばってしまっているとは思いますが、日本の半導体産業をもう一度国際競争の舞台に復帰させたいという思いを抱いている人材が何人かはいるはずです。かつて自己防衛のために若手への技術伝承を拒んでいた人も、引退を前にきっと積極的に要諦を伝えようとするはずです。