元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は日本で数少ない半導体のプロ経営者だ。日本テキサス・インスツルメンツ(TI)の倉庫番から身を起こし、日本TIの副社長などを経て、当時経営不振が続いていたエルピーダメモリに社長として迎えられた。就任わずか1年で経営改革を成功させるなど辣腕をふるった実績を持つ。
エルピーダはリーマン・ショック後に急速に収益性が悪化し、最終的には米マイクロンテクノロジーへの売却に追い込まれた。そこから10年、坂本氏はここ数年かかわっていた中国・紫光集団を昨年秋に離れ、フリーになった。そこで、中国半導体産業の現況、日本の半導体産業再興に向けた課題などについて、もろもろ語ってもらった。聞き手は日本経済新聞編集委員兼論説委員の小柳建彦が務める。
ウィンコンサルタント代表・東京理科大学客員教授

TIでは倉庫番からのキャリア・スタートであったが次第に頭角を現し、89年からは米TI本社でワールドワイド製造・プロセス・パッケージ開発本部長を務め、91年に帰国して日本TI取締役、93年副社長。97年9月に神戸製鋼所に移り、98年10月半導体事業本部長。2000年2月に日本ファウンドリー(現ユー・エム・シー・ジャパン)に移り、同3月から社長。02年11月にエルピーダメモリに転じて社長、03年1月に社長・最高経営責任者(CEO)に就任した。
エルピーダメモリでは、就任前年まで3年連続200億円以上の赤字が続いていた状況を改善。わずか1年で年間150億円の利益が出るまでに立て直すなどの経営改革に成功し、その後も順調に業績を伸ばしたが、リーマン・ショック後に収益性が悪化。公的資金の注入も受けて存続の道を探ったが12年2月に会社更生法を申請、13年7月の米マイクロンテクノロジーへの売却完了に伴い、社長・CEOを退任した。
15年に半導体設計会社のサイノキングテクノロジーを設立、中国安徽省合肥市の先端半導体工場プロジェクトへの参加を目指した。2019年11月に中国紫光集団高級副総裁兼日本子会社のCEOに就任。同社の経営悪化に伴い、2021年12月をもって同職を退任した。現在は台湾エイデータ・テクノロジーほか、いくつかの企業の顧問を務める。1947年生まれ、74歳。(写真:加藤康)
日本経済新聞編集委員兼論説委員