トヨタ自動車の大型SUV(多目的スポーツ車)の新型「レクサスLX」は、先代車に比べて車両質量を約200kg軽くした。プラットフォームやボディー骨格などを刷新することで実現した。軽量化によって、オンロード走行時の操舵(そうだ)の応答性などが向上した。燃費の改善にも寄与する(図1)。
トヨタMSシャシー設計部の北本将史氏によると、約200kg軽量化の内訳はエンジンで約10kg、サスペンションなどの足回りで約55kg、ラダーフレームで約35kg、ボディー外板へのアルミニウム(Al)合金の適用で約45kg、ボディー骨格への超高張力鋼板の適用で約40kg、その他のボディー骨格の改良で約15kgである。ラダーフレームとボディー(外板と骨格)の合計で先代車より約135kg軽くなっており、軽量化分全体(約200kg)の67.5%に達する。
フレームに新たな工法を適用
新型レクサスLX(以下、新型車)は、トヨタの車両設計・開発手法「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づくフレーム車向けプラットフォーム「GA-F」を適用した(図2)。先代車のフレームでは、強度が必要な部位に多くの補強材を使っていた。これに対して新型車のフレームでは、「曲線(非線形)TWB(テーラード・ウェルド・ブランク)」という新たな工法を用いて、補強材の使用量を減らした。
TWBとは、厚さの異なる鋼板をレーザー溶接した後にプレス成形する工法である。トヨタ自動車MSシャシー設計部主幹の浅井哲也氏は、「これまでは、直線形状の鋼板同士の接合にしか使用できなかった」と話す。
今回の新工法は、曲線形状(非線形)の鋼板の接合にも適用できるのが、従来のTWBとの違いである。車両の前後を通す「サイドレール」の断面の高さを増やした部分や、クロスメンバーの一部に新工法を適用した(図3)。新工法を適用した部位は、補強材を使わずに必要な強度を確保できる。
フレームのクロスメンバーの位置も改良し、厚さ3.6~5.0mmの高張力鋼板を多用した。サイドレールには引っ張り強さが590MPa級の高張力鋼板を使うが、サイドレールと車両中央のクロスメンバーが接する部分には980MPa級を適用した。
エンジンや変速機などを搭載する車両前部のクロスメンバーは780MPa級である。これらの改良によって、約35kgの軽量化と全方位の衝突安全に対応した。先代車のフレームで使っていたのは780MPa級の高張力鋼板までであり、980MPa級以上の高張力鋼板は適用していなかった。