シャープのIT部門がここ5年間で激変している。2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となって以降、ベンダー依存からの脱却を進め、情報システムを「内製」する体制に大きく舵(かじ)を切った。エンジニアの中途採用を積極化し、メインフレームからの脱却を自前で完遂するなど、ベンダー顔負けの開発力を着実に身に付けてきた。知られざるシャープIT部隊の全貌に迫る。
2022年4月4日、シャープの堺本社で「とある」入退管理システムが稼働を始めた。来訪者は事前に送られたメールのQRコードを受付で提示し、敷地に入る。帰りも同様にQRコードを提示すると、いつ誰が入退場したかが全てシステムに記録される――。
一見すると、最近よく目にする入退管理の仕組みだが、同社の場合は少し事情が異なる。同システムはシャープのIT部門が全て自前で開発したからだ。
基幹系、情報系問わずあらゆるシステムを内製
シャープは2017年を境に、システム開発を内製する体制に大きく舵(かじ)を切った。売り上げに直結する基幹系システムや、業務効率化を目的にした情報系システムなど、グループ約4万8000人の従業員を支えるあらゆるシステムが内製の対象だ。
この入退管理システムもIT部門のお手製で、これまで来訪者と紙でやり取りしていた入館手続きを、全てデジタルで完結できるようにした。
「こういった細かなシステムを一つひとつ自前で開発できるようになったのは、ここ数年で強化してきた内製の賜物(たまもの)だ」。同社IT部門を率いる柴原和年ITソリューション事業部事業部長はこう胸を張る。
柴原事業部長によると、シャープは2016年までシステム開発をITベンダーに大きく依存する体質だったという。同社は2000年代のアウトソーシングブームのタイミングで、多くのユーザー企業と同様にシステム開発を外注する体制を採った。