シャープのIT部門がここ5年間で激変している。2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となって以降、ベンダー依存からの脱却を進め、情報システムを「内製」する体制に大きく舵(かじ)を切った。エンジニアの中途採用や社内育成を徹底し、IT人員は5年で9倍に拡大。ベンダー顔負けの開発力を着実に身に付けている。知られざるシャープIT部隊の全貌に迫る。
激変のシャープ、鴻海傘下で突き進む「システム内製」の覚悟(1)より続く「IT部門はベンダーに注文を付けるだけの立場ではなく、本来は(内製開発により)自ら汗をかいて文句を言われる立場であるべきだ」――。シャープのIT部門を統括し、同部門によるシステム内製化を主導してきた柴原和年ITソリューション事業部事業部長はこう強調する。
情報システムの企画機能のみを持ち、開発をITベンダーに依存するユーザー企業が多い中、シャープは現在、企画、設計、開発、保守まで全ての開発工程を「内製」する。
2017年に自社データセンターを立ち上げ
シャープは鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となった翌年の2017年から、情報システムを内製する体制に大きく舵(かじ)を切った。「外注費は1円でも会長決裁」という鴻海流コスト管理の徹底が、同社IT部門を内製に向かわせたといっても過言ではない。
「内製はコストに加え、品質やスピードを含むQCDの全てにメリットがある。(IT部門が)自ら手を動かし工夫する努力を抜きに、本当に良いシステムはつくれない」。柴原事業部長は内製化に取り組む意義をこう強調する。
同社の内製を支えているのが、2017年に立ち上げた自社専用のデータセンターだ。場所は公表していないが、同社はそれまでパブリッククラウドや外部のデータセンターに点在していたシステムを、このデータセンターに集約してきた。
シャープはこのデータセンターでクラウド構築のOSS(オープンソースソフトウエア)の「OpenStack」をベースとしたプライベートクラウドを立ち上げ、「外部のクラウドサービスへ依存せずにIT化を推進できる仕組みを整えている」(柴原事業部長)という。AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure 、Google Cloudといったパブリッククラウドへの移行を進める企業が多い中、シャープがそうした潮流の逆を行くのは、明確なメリットを見いだしているからだ。