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既存システムの無駄を洗い出し、内製で作り替えてコスト削減

 同事例のように、シャープのIT部門は既存システムを見直して徹底的に無駄を洗い出し、内製で作り替えることによってコスト削減を実現している。その作り替えの際に必ず、「シンプル化したり、共通化したり、保守性を高めたりするほか、OSSをフル活用して安価に構築するという視点を事業部内で重視している」と柴原事業部長は説明する。「ベンダーに依存せず内製しているからこそできることだと自負している」(同)。

 2020年10月に自前で完遂したメインフレームからの脱却プロジェクトでも同様に、「単純にシステムを移行するのではなく、内製化する際に仕組みを単純化して処理を共通化することで保守性の高い仕組みを構築した」(移行プロジェクトを担当した木下敬太ITシステム推進部主任)という。

 例えばメインフレーム内に実装していた伝票出力の機能。シャープの商流を支える重要システムであるが、従前は取引先ごとに異なる530種類の伝票のフォーマットを、プログラムとしてメインフレーム内に保持していた。

 同社は移行のタイミングで伝票出力の機能を別システムとして切り出すことを決断。基幹システム内に余計な情報を持たせないようにして保守・運用が容易になるよう工夫した。

内製した伝票出力システムのイメージ
内製した伝票出力システムのイメージ
(シャープへの取材を基に日経クロステック作成)
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 加えて、取引先ごとに用意していた伝票が本当に必要であるかも1社1社改めて確認し、標準フォーマットで問題ない取引先にはそちらへの切り替えを依頼。こうした見直しにより、伝票の種類を530種から156種まで削減した。この156種も実際には3種類のプログラムからフォーマットを出力できるため、システム内に余計なプログラムを持つ必要がなく、保守・運用の負荷を大幅に軽減できるという。

内製によってITコストは半減に

 ITによってあらゆる業務の見直しを進めているシャープ。なぜこのような効果が生まれるのだろうか。

 そこには数字に基づく厳密な投資判断の基準があった。同社では、現行システムのコストを洗い出した上で、リプレースした際にどれだけコスト削減になるかを必ず明確にする。ここまでは至って普通の判断だが、同社はこのコスト計算に際し、社内人材が開発に関わった工数に相当する人件費を減価償却費として計上する。「人件費を減価償却しても必ずコスト削減が見込める案件でなければ、議論のテーブルにも上がらない」(柴原事業部長)。鴻海流のコスト意識の徹底が、効果的なコスト削減につながっている訳だ。

 こういった一連の取り組みが奏功し、シャープの既存システムのコストは2017年時点と比べて半減した。実際には新規にシステム化したものも多いためITコストのトータルの削減効果は3割程度だが、IT部門がこの5年間で進めてきた内製によるコスト削減効果がいかに大きいかは明らかである。

 また、柴原事業部長は内製化することで「ベンダーとの付き合い方がうまくなる」ことの重要性を強調する。忙しさに波があるシステム開発案件を全て社内リソースで賄うのは現実的ではなく、適宜外部のリソースに頼る必要がある。ただ「自分たちで手を動かして頭を使ってこそ、(要件定義がうまくなるなどして)本当に必要なシステムをITベンダーと詳細に詰められる」(柴原事業部長)。