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 直列6気筒エンジンにプラグインハイブリッド車(PHEV)、そして組み合わせる8速AT(自動変速機)も新開発――。新型SUV(多目的スポーツ車)「CX-60」を皮切りに量産が始まった「ラージ商品群」に向けて、マツダがパワートレーンを刷新した。パワートレーン開発を担当した同社執行役員の中井英二氏に、エンジンを中核に据えた電動化対応について聞いた。

マツダ執行役員の中井英二氏
マツダ執行役員の中井英二氏
パワートレイン開発・統合制御システム開発担当。(撮影:日経Automotive)
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 ラージPF向けのパワートレーン開発では、どのような点を重視したのか。

 開発で注力したのは3つだ。1つめが環境。燃費や排ガス、カーボンニュートラルへの備えなど、環境性能の追求を徹底した。2つめが走り。トルクや出力を高め、応答がよく力強いパワーソースによる走りの良さを目指した。3つめが心の活性化。加速度のつながりや8速ATのダイレクト感、応答感やリズム感、ペダルのワークスペース確保など、意のままに運転できることを重視した。

 環境性能では例えば、48Vマイルドハイブリッド車(簡易HEV)は大排気量のエンジンと小さなモーターを組み合わせることで、小排気量エンジンに比べて唯一の弱点である低負荷領域の燃費改善を図った。低負荷領域はモーターが補助することで克服する。一方のPHEVは、大きなモーターで力強い走りと環境性能を両立させた。

 排気量3.3Lの直列6気筒ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」に関して言うと、カーボンニュートラル燃料やバイオ燃料を将来的に使用することを想定して開発した。燃料消費の抑制という観点で、内燃機関の進化は今後も重要になる。新エンジンは、広い動作範囲で熱効率40%以上を達成している。

バイオディーゼル車を耐久レースで鍛える
バイオディーゼル車を耐久レースで鍛える
写真は、排気量1.5Lのディーゼルエンジンを搭載するレース車両「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」。使用済み食用油や微細藻類油脂を原料とした100%バイオ由来のバイオディーゼル燃料を使う。(写真:マツダ)
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 直6エンジンのラインアップについて確認したい。ラージPFのアイテムとして、ディーゼルのSKYACTIV-Dとガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、そして超希薄燃焼ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を用意している。簡易HEVではない、純粋なエンジン車も展開していくのか。

 3種類のエンジンとも、電動化していないパワートレーンを搭載したモデルも存在する。いずれも8速ATと組み合わせる。国や地域の需要と環境規制などによって使い分ける方針だ。

 欧州の環境規制に対応するには、二酸化炭素(CO2)排出量の低減が欠かせない。CX-60のPHEV(欧州仕様車)は33g/kmを達成しているが、簡易HEVモデルはどうか。

 直6エンジンのSKYACTIV-G/D/Xを使う簡易HEVはいずれも、95g/km以下というCO2排出量の規制値をクリアする水準を達成している注)。だから、売れば売った分だけ、規制対応の面で貢献してくる。

注)欧州はCO2排出量を企業平均で95g/km以下(車両質量によって変動)にする規制が導入されている。1g/km超過すると95ユーロ(1ユーロ=135円換算で約1万3000円)/台と多額の罰金がかかり、極めて厳しい。