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 文章を執筆するための素材並べでは、大切な内容から順に書いていくというコツに加えて、もう1つ大切な項目がある。話題を散らかさないことだ。内容の近い素材は文章のあちらこちらに分散させず、まとめて記載する。

 まずは、次の例文を読んでみよう。

<例文1>

 この10年間で大型車の車輪脱落事故が大幅に増えている。国土交通省によると、2011年度は11件だったが、20年度は131件と約12倍もの増加だ。

 これまでに発生した事故状況の分析では、ホイールが適切に締め付けられていなかった点が主な要因だと分かっている。そのため、国や業界団体は協力して、適切なタイヤ交換作業や点検などの保守管理に向けた啓発活動を続けてきた。しかし、事故件数の減少には至っていない。

 また、車輪脱落事故に関して目を向けるべき事実がもう1つある。それは、脱落する車輪が左側後軸に集中している点だ。左側後軸の割合は90%を超える。

 なぜ、事故が減らないのか。その背景として注目すべきなのがホイールの締め付け方式の影響だ。

 十数年前、日本の大型車メーカーはホイールの締め付け方式をJIS(現在の日本産業規格)方式からISO(国際標準化機構)方式へと一斉に変更している。09年10月から新型車にISO方式を適用し、10年9月以降は継続生産車でも採用した。

 事故件数が増加に転じたタイミング、増加傾向が続いた点などから、ホイールの締め付け方式の変更が影響しているのではないかという意見は根強い。国交省によると20年度の脱落事故131件のうち約120件がISO方式だった。

 車輪の脱落が左側後軸で9割超となった要因として、国交省は左側通行の影響に着目する。推定される要因は以下の4つだ。

 (1)右折時に遠心力によって左輪へ大きな荷重が加わる(2)左折時に左側後軸の車輪がほとんど回転せずに旋回するため、タイヤによじれるような力が加わる(3)道路の中心部(センターライン付近)が高い場合が多く、車両が左側に傾いて荷重が加わる(4)前輪の異常はハンドルの振動などによって運転手が気づきやすい。

 この例文、少し読みにくいと感じたのではないだろうか。読みにくいと感じられれば、分かりやすい文章を書くための基礎はしっかりと備わっている。まさにこの例文には改善すべき点があるからだ。