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 主題など大切な話題を後回しにした文章が出来上がる大きな理由の1つとして、書き手が時系列にとらわれてしまう点が挙げられる。時間経過に沿って書く方が、書き手は話を整理しやすいケースが多いからだ。

 しかし、本連載でも指南したように、長い前置きは読み手にとって、本題にたどり着けないというストレスにつながる。書き手の都合と読み手の都合は必ずしも一致しないのだ。分かりやすい文章を書くためには、時系列という呪縛から早めに解き放たれなければならない。

 ここで、電柱の地中化が十分に進んでいない実情を伝えようとする以下の2つの文章を読み比べてほしい。

<例文1>

 無電柱化推進法を所管する国土交通省は、同法に基づく計画に従い、自治体と共に緊急輸送道路などで無電柱化を進めている。2018年度から20年度までの3年間で延長2400kmの道路を無電柱化する目標を掲げたものの、実現は1800kmにとどまっていた。現在は21~25年度までの5年間で、未達成の600kmに3400kmを加えた4000kmの無電柱化を目指している。

 資源エネルギー庁と総務省は21年度に、全国の電柱について新設と撤去の本数を調査した。すると、第3四半期までに16万7000本が新設、13万4000本が撤去されていた。差し引きで3万3000本増えた計算だ。

 第4四半期に新設と撤去がそれまでと同じペースで進めば、21年度全体で電柱が約4万5000本増えると同庁は推計する。つまり、電線地中化が遅れる一方で、電柱が増えているのだ。国交省が22年4月12日に開いた「無電柱化推進のあり方検討委員会」の会合で明らかになった。

 電柱設置と比べた地中化工事のコストが高く、工期が長い点が、無電柱化のスピードが思うように上がらない一因となっている。

<例文2>

 国土交通省が2022年4月12日に開いた「無電柱化推進のあり方検討委員会」の会合で、全国の電柱が21年度全体で約4万5000本増えるという推計が明らかになった。資源エネルギー庁が計算した。電線地中化が遅れる一方で電柱が増えているのだ。年度内の第3四半期までと同じペースで電柱の新設と撤去が進む前提で求めた。

 同庁と総務省は21年度に、全国の電柱について新設と撤去の本数を調査した。すると、第3四半期までに16万7000本が新設、13万4000本が撤去されていた。差し引きで3万3000本増えた計算だ。

 無電柱化推進法を所管する国交省は、同法に基づく計画に従い、自治体と共に緊急輸送道路などで無電柱化を進めている。18年度から20年度までの3年間で延長2400kmの道路を無電柱化する目標を掲げたものの、実現は1800kmにとどまっていた。現在は21~25年度までの5年間で、未達成の600kmに3400kmを加えた4000kmの無電柱化を目指している。

 電柱設置と比べた地中化工事のコストが高く、工期が長い点が、無電柱化のスピードが思うように上がらない一因となっている。

 例文1と例文2の文章はいずれも電線地中化の進展が芳しくないものの、電柱が増えているという状況を伝えている。では、どちらがその意図をうまく伝えられているだろうか。