全4511文字
PR

 文章を書く際の要素の並べ方を、実践的に学ぶうえで、実際の文章の分解は効果的な方法だ。どんな要素がどこに入っているかが、端的に分かるからだ。実際に作業してみるのが分かりやすいので、以下でその作業を説明していく。

 まずは、木材に注目が集まる理由を解説した以下の文章を読んでみて、パラグラフごとにどんな要素が入っているかを読み取ってみてほしい。

<例文1>

1)なぜ未来の材料として木に注目が集まっているのか。大別すると3つの理由がある。二酸化炭素の排出量削減と資源の豊かさ、材料自体が持つ魅力の3つだ。

2)樹木は光合成で大気中の二酸化炭素を取り込み、木材の形で炭素を貯蔵する。木材の形で利用していれば、その間、二酸化炭素を固定できることになる。林野庁が2018年6月に公表した森林・林業白書によると、一般的な木造住宅の炭素貯蔵量は、鉄骨プレハブ住宅や鉄筋コンクリート造の住宅に比べて約4倍に及ぶ。

3)資源の豊かさという点では、日本は国土の3分の2が森林だ。うち4割は人工林で、人工林の約半分は、17年3月末時点で植林から50年を経過している。

4)ところが、国産木材の利用は十分に進んでいない。近年は改善傾向にあるものの、17年時点での木材自給率は36.1%にとどまる。海外の安い木材や木材製品に市場を奪われているのだ。

5)こうした社会的な背景だけでなく、木材自体が様々な特長を持つことが、注目を集める最大の理由だ。真っ先に掲げられる特長は軽さだろう。軽い材料であれば、構造の簡素化につながり、コスト削減に結び付く。

6)扱いやすさも長所の1つだ。木材は建築用の部材としてパネル化を図るなどすれば、施工が容易になる。この点は、工期短縮などに直結する。海外の高層ビルで木造を多用する事例が散見され始めた一因は、工期の短さにほかならない。

7)一定の強度を期待できる点も魅力だ。単位重量当たりの強度である比強度は、木材がコンクリートや鋼鉄に勝る。例えば、スギの引張方向の比強度は鋼鉄と比べて約4倍。スギの圧縮方向の比強度はコンクリートと比べて約6倍の水準になる。

8)意匠性も木材の大きな魅力だ。内装に木質系の材料を採用すると利用者がリラックスできたり、集中力を高められたりするという調査データも存在する。生活空間に木質の製品を置きたいというニーズは大きい。

9)木材には特有の課題がある。腐朽や燃えやすさ、品質のばらつきは代表例だ。しかし、短所を補う技術開発の進展や使い方の工夫によって、長所を生かしやすい環境が生まれてきた。持て余していた林産資源を大きな宝に変える可能性を、テクノロジーがもたらそうとしている。

 では、パラグラフごとに書かれている要素を確認していこう。