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 ここまでの連載では、材料の準備や構成の組み立て方など、文章を書き始める前に準備すべきことや整理しておくべきことを解説してきた。今回からは、もう少し具体的な作文技術を示していく。

 世の中には、文章の書き方を指南する書籍が数多く発行されている。そうした書籍で必ずといっていいほど指南されているテクニックの1つは、1文を短くする手法だ。作文技術としては基本中の基本の項目に当たる。文章を読んでいる途中でつっかえたり、読み直しが生じたりする箇所は、ほとんど長い文の中にある。一つひとつの文をコンパクトにすれば、こうした箇所を減らせる。

 新聞や雑誌の記者が執筆、編集する文章でも、「ちょっと長いな」と感じる文に出会う機会は多い。大抵は、1文にまとめて複数の事柄を伝えようとして生じる。書いている本人は、話の全体像が分かったうえで文章をつづっているので、どんどん情報を詰め込んでしまおうとするためだ。

 これは、人の会話を意識して聞いてみると分かると思う。人の会話では、なかなか文が切れないケースが多い。「昨日、工事の最中に急に雨が降ってきて、据え付けのために外に出してあった設備がぬれたんだけど、それはぬらしたらまずい機器だったから、現場監督が本社の幹部にえらく怒られていて、その後で監督が不機嫌になったものだから、若手は困っていたよ」。こんなふうに文を切らずにどんどん話し続ける人が、「周囲に意外と多いな」と感じられると思う。

 話しかけるようなイメージで文章を書いてしまう人は、このように話題をどんどんつなげて1文を長くしてしまう傾向にある。もちろん、書いている本人は、分かりやすい文を書いているつもりだろう。

 しかし、長い文は読み手には至極分かりにくい情報になってしまう。例えば、主語と述語の関係が不明瞭になったり、修飾節がどこにかかっているのかが分かりにくくなったりする。結果として、文中で本当に大切な部分がどこにあるのかも判別しにくくなる。

 以下の例を見ながら文の長さと分かりやすさの関係を解説していく。特定の通信機能を持ったドローンが砂防ダムを点検する国内初の実証実験を伝える文章を2通りのパターンで用意してみた。