パナソニックコネクト*1は2021年10月末、溶接設備のデータから、溶接欠陥が生じた理由を解明・推測する機能を開発した。溶接部(溶接ビード)の外観を自動検査するシステム「Bead Eye(ビードアイ)」の検査結果と、溶接設備の稼働データを収集・蓄積・分析するシステム「iWNB(integrated Welding Network Box)」を連携させた。今後両システムを導入済みの自動車関連メーカーを中心に新機能を活用してもらう計画だ。手直しの削減や品質向上が期待できる。
2種類のアルゴリズムで良否判定
Bead Eyeは産業用ロボットのアーム先端に取り付けたセンサーで溶接ビードの外観をスキャンし、欠陥の有無や溶接の良否を自動で判定する(図1)*2。20年5月に販売を開始した。主に自動車や2輪車の量産工場向けで、数社が導入している。
Bead Eyeの特徴は「良品比較検査」と「AI外観検査」という2種類の検査アルゴリズムを組み合わせている点だ。良品比較検査は同社の協業先で、産業用ロボットの制御ソフトを開発するベンチャー企業リンクウィズ(浜松市)の3D形状認識技術を活用している。あらかじめ登録した良品(マスターワーク)と検査対象を比較し、ビードの3D形状の一致度をみる。ビードの欠けや位置ずれ、盛り上がり量や幅、長さの過不足などについて良否判定できる(図2)。
ただし、良品比較検査は微小な欠陥の検出には向いていない。その弱点を補うのがAI外観検査だ。パナソニックが蓄積してきた数万枚のビードの欠陥に関する画像を学習した人工知能(AI)がピット(溶接部の表面に生じる小さな穴)、スパッタなど微小な欠陥がないかを高精度に判別する*3。両方のアルゴリズムで良品と判定したビードのみがOKとなる(図3)。1つのビードの検査にかかる時間は数秒程度だ。
一方、iWNBは20年8月に発売した。最大32台の溶接ロボットから溶接の電圧・電流や温度、アーク切れ時間、ワイヤの送り速度、モーターの負荷などのデータをリアルタイムに収集。それを分析して溶接装置の稼働データなどを数字やグラフとして可視化する。各ビードにはIDを振っており、ビードごとに溶接時のデータを確認できる。
このiWNB にBead Eyeとの連携機能を追加した。溶接の実績データに加えて、新たに外観検査の結果を確認できるようになる。iWNBを導入済みの顧客に対してはシステムのメンテナンス時に無料で連携機能を追加する。22年4月時点では、一部の顧客が連携機能を実証中だ。外観検査の結果から遡って溶接時のデータを分析できるようになり、効率よく不良の原因を特定し、最適な溶接条件を導き出せる。具体例を見てみよう。
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