製造業における検査工程は人間の五感や手作業に頼る部分が多く、自動化が遅れていた。しかし、センサーや人工知能(AI )の進歩により、熟練の技術者の判断を機械で再現できるようになり、自動化が進んでいる。さらには、人間の作業を代替するだけでなく、人間ではできないような処理も可能になりつつある。例えば、製品を高精度かつ高速でスキャンする技術の進化によって、従来の抜き取り検査を、インラインの全数検査に切り替えられるようになってきた。検査工程は、人手不足や、次々と明らかになる品質不正問題を背景に、省人化や無人化、トレーサビリティーの確保といった社会的要請がますます高まっている。生産性向上や品質担保に向けた検査機器・検査システムの最新動向を特集する。

検査3.0
目次
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3D形状を高速測定する「光コム」、精度向上と低価格化が進む
レーザー光を用いた新しい測定手法として、「光コム」が注目されている。非接触かつ高速で、μmオーダーの精度で金属部品の寸法を測定できる。わずかに周波数の異なる何種類ものレーザー光を、同軸上から測定対象に照射する仕組み。世界で初めて、XTIA(クティア、東京・品川)が産業応用に成功した技術である。
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溶接欠陥の原因解明容易に パナソニックが検査と加工のデータ連携
パナソニックコネクトは21年10月末、溶接の設備データから、溶接欠陥が生じた理由を解明・推測する機能を開発した。溶接部(溶接ビード)の外観を自動検査するシステム「Bead Eye(ビードアイ)」の検査結果と、溶接設備の稼働データを収集・蓄積・分析するシステム「iWNB(integrated Wel…
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スポット溶接の不良を見抜く、日産栃木工場が目指す全数監視
日産自動車はスポット溶接工程の状態をリアルタイムで判定する「溶接インラインモニタリングシステム」を栃木工場に導入している。同工場が2021年に導入した生産ライン「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を構成するシステムの1つだ。全ての溶接箇所で加圧力と電流値の変化を測定して分析する。
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作業指示も結果入力も音声で、自動化に向かない検査を効率化
シーネットコネクトサービス(千葉市)が2021年に提供を開始した「LISTEST」は、検査や点検と行った業務を対象とした音声システムである。作業者に音声で作業手順を伝える「音声指示」や、作業者の音声を認識して検査結果などをデータ化する「音声入力」を行う。
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「ありのままの形」を捉えるキーエンスの測定器 検査精密化で需要増
近年、製品の小型化や高密度化が加速し、形状・寸法検査においてより精密な測定が求められている。要求される品質保証度の高まりにより、従来の抜き取り検査から全数検査に切り替える動きもみられる。そうした用途に対応するためさまざまな方式の測定器が進化している。キーエンスのレーザー変位計(プロファイル測定器)…
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異なる3次元測定器を一括操作 検査データも統合管理
PolyWorks Japan(東京・港)が販売する3次元測定用ソフトウエア「PolyWorks|Inspector」は、異なる機種の3次元測定器でも、同じ操作画面から直接操作できる。機種ごとにプラグインが用意されており、3次元測定器と接続したPCにインストールして使う。
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AIで検査を不要にしたスバル 加工データから全数の品質を予測
SUBARU(以下、スバル)は富士通などと共同で、カムシャフト研削加工における全ワークの品質をリアルタイムで予測し、良否を判定する人工知能(AI)モデルを開発した。2019年12月からの実証試験を経て、22年1月末からスバル群馬製作所大泉工場(群馬県大泉町)の量産ラインで本格稼働を開始している。
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工場の検査自動化“より安く” ヤマハ発動機が内製と外注で攻め
人手不足への対応や品質管理を徹底するために検査の自動化を進める企業は多い。ただ、人の五感が担ってきた検査の自動化は簡単ではない。導入費用が高すぎたり、十分な精度で検査できなかったりして、検査装置の導入を断念する企業は少なくない。ヤマハ発動機はそうした壁を乗り越えるため、検査の自動化に取り組む領域を…