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 自治体システム標準化に向けたデジタル庁の動きに遅れが出ている。

 全国約1700の地方自治体は2025年度末までに、それまで個別に運用してきた業務システムをデジタル庁が主導する標準準拠システムに移行する計画だ。標準準拠システムはデジタル庁が整備・運営するマルチクラウドのシステム基盤「ガバメントクラウド」で可能な限り稼働させ、各自治体は共同利用する形を取る。対象となる業務は住民記録や地方税、介護といった主要17業務と戸籍など3業務を合わせた20業務に及ぶ。

自治体システム標準化のスケジュール。2022年度中に標準仕様策定や省令制定などの準備が進む予定だ
自治体システム標準化のスケジュール。2022年度中に標準仕様策定や省令制定などの準備が進む予定だ
(出所:デジタル庁と総務省の資料を基に日経クロステック作成)
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 デジタル庁は自治体システム標準化を進める法律に基づき、2022年3月までに標準化推進の方向性を定める「基本方針」を策定し、これを踏まえて2022年4月以降に標準化基準を定めて省令を制定するとしていた。ところが、2022年3月という期限を過ぎても基本方針はまだできていない。デジタル庁の担当者は「複数の自治体やベンダーにヒアリングしており、その結果を踏まえて基本方針を策定する予定だ」と説明する。

 遅れの背景には、標準仕様の策定を進めるなかで見えてきた課題を解決できていない点がある。前述の20業務に関する標準仕様は、それぞれの業務を所轄する府省がデジタル庁と連携して作成を進めている。ただ、自治体の規模によって標準化するシステムで扱う業務の内容や進め方が異なる。デジタル庁はこの違いをシステム標準化の基本方針に吸収・反映できるように「丁寧にヒアリングを進めている」(デジタル庁の担当者)という。

自治体からデジタル庁が見えにくく

 自治体システム標準化を巡っては、ステークホルダーが府省や自治体、ITベンダーなどに広くまたがる。そのうえ基本方針の策定から移行完了までを4年弱で完了させなければいけない。スケジュール通りのプロジェクト進行を危ぶむ声は少なくない。

 ただ、デジタル庁から自治体に対して、スケジュールの変更や現在の状況などについて詳細な説明はないという。「標準化についてデジタル庁からは特に情報提供がないので、『待ち』の状態が続いている」。ある自治体の情報システム担当者はこうこぼす。

 デジタル庁は各府省と標準化作業の状況を共有し、検討を進めるため、2021年9月に「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化に関する関係府省会議」を開いた。次回の開催を2022年2月としていたが見送った。デジタル庁の担当者は「関係府省とは常日ごろ打ち合わせをし、密に情報共有を図っているため」と説明する。

 これにより自治体からはデジタル庁や関係府省の動きが一段と見えにくくなった。一般に、こうした府省庁間の打ち合わせ内容は非公開であり、国民はおろか自治体にも共有されないからだ。