名古屋大学は「宏光MINI EV」(上汽通用五菱汽車)のインバーターを分解・調査した。部品統合化が低コストを大きく手助けしたことは前半の記事で見た通りだ。後半の記事では、回路設計や防振機構などで見られた設計力の高さと、部品選定のメリハリについて見ていこう。
この三相インバーターの設計力の高さは、回路設計や防振機構の細やかな点にも表れていた。パワー回路部などがある下部ケースを見てみよう。
パワー回路部は2層構造になっている(図8)。1層目には主に平滑用のアルミ電解コンデンサーやドライブICなどが載り、2層目には主に電力変換用のパワー半導体が載る。
電力は直流入力端子から流入し、1層目のアルミ電解コンデンサーで直流平滑される(図9)。その後、直流入力カラーを介して2層目基板に送られ、三相パワー半導体群で交流に変換される。この交流電力は、インバーター構造の3本の支柱としても機能している交流出力端子ポールによって上部ケースのAC用電流センサーに送られる。最後に三相出力電流端子によってインバーターの外に出ていく。
これらの回路も非常に良く考えられている。例えば直流入力端子部のDCバスバーの構造だ。3枚の絶縁樹脂板に2枚のバスバー配線を挟み込み、基板に垂直に立てて実装されていた(図8)。これは低インダクタンス化を実現するためだとみられる。
2層目のパワー半導体の配置も興味深い(図10)。パワー半導体は、三相インバーターのスイッチとして6並列化され、計36個ある。基板に広く分散して配置されていた。これは均等な熱分散を実現するためだと考えられる。熟練した設計者が本設計に携わっていたようだ。
搭載されていたパワー半導体は、ドイツInfineon Technologies製のSi MOSFET「IPB072N15N3」(図11)。耐圧が150V、定格電流が100Aだ。