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 「お客さまにご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」。カメラのフラッシュを一身に浴びながら口上を述べ、深々と頭を下げる企業のトップ。満を持して謝罪会見を開き、世間の怒りが鎮まれば、いずれマスメディアの関心も薄れていくだろう――。

 これまで幾度となく繰り返されてきた企業の謝罪手法が、令和の時代に大きな転換期を迎えている。とりわけシステム障害や情報流出などIT関連の不祥事に対する社会の批判は厳しさを増しており、謝罪会見を開催しても事態の沈静化につながらなかったケースが少なくない。従来の手法の何が問題なのか。

初動の遅れが尾を引く

 「初動の遅れが致命的だった」。危機管理の専門家がこう口をそろえるのが、みずほ銀行の度重なるシステム障害への対応だ。事の発端は2021年2月28日朝。ATMに入れた通帳やキャッシュカードが吸い込まれて戻ってこないといった事態が5000件以上発生し、店頭で4時間以上足止めを食った利用者もいた。その後も2週間足らずで4度の障害が続いたうえ、8月以降もさまざまなシステム障害が発生。2021年の1年間で計8回にわたって記者会見を実施する事態となった。

みずほ銀行が2021年3月1日に開いた記者会見の様子
みずほ銀行が2021年3月1日に開いた記者会見の様子
(撮影:日経クロステック、以下同)
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 最初のシステム障害は2月28日の午前10時前後に発生し、SNS(交流サイト)には困ったATM利用者からの投稿が相次いだ。だが同行のSNSアカウントは沈黙を続け、Webサイトでの情報提供も不足。翌3月1日の午後6時になってようやく最初の謝罪会見を開催するに至った。「休日のトラブルであっても当日夜に緊急記者会見を開催するなど手を打つべきだった」。企業の危機管理広報に詳しいエイレックスの江良俊郎代表はこう指摘する。

 実は最初の謝罪会見そのものについては「定石通り」「無難な内容」と評する専門家が少なくない。企業向けに危機管理広報トレーニングを手掛けるレイザーの大杉春子代表は「それほど大きな問題はなかった。プロからトレーニングを受けたうえで会見に臨んだのだろう」と分析する。手元に目を向けたまま用意された原稿を読み上げる、テーブルの下から会見者の足元の動きが見えてしまうなど改善すべき点はあったものの、藤原弘治頭取(当時)が終始落ち着いたトーンで話していたのは評価できるという。