全1872文字
PR

 企業経営を考えるうえで需要予測は欠かせない。従来の需要予測は主として類似条件における実績データから導き出した数値を活用したり、現場の経験や勘に頼ったりするケースが少なくなかった。そうした従来手法では、正確な予測がますます難しくなっている。新型コロナ禍のような過去の経験則が通用しないビジネス環境の変化が起きているのに加え、現場の経験や勘でカバーしようにも経験豊富な人材は慢性的に不足しているからだ。

 一方で、SNS(交流サイト)や気象データなど情報システムで扱えるデータは急増している。AI(人工知能)であれば、多様なデータを需要予測の精度向上につなげられる可能性がある。そのためAIによる需要予測に乗り出す企業が増えている。先行事例を基に、AIによる需要予測の課題や効果を探る。

 回転ずしチェーン店「スシロー」を展開するあきんどスシローは新たな需要予測システムの導入に踏み切った。あきんどスシローの親会社であるFOOD & LIFE COMPANIES(F&LC)の坂口豊情報システム部部長は「予測は個店ごとの店長の力量に左右される場面が多かった」と当時の課題を振り返る。

スシローの店舗イメージ
スシローの店舗イメージ
(出所:FOOD & LIFE COMPANIES)
[画像のクリックで拡大表示]

全国600店舗それぞれの需要予測は人では難しい

 スシローは全国で約600店舗を展開している。人が600店舗それぞれの需要を個々に予測するのは難しい。販促キャンペーンの内容や天候、周辺地域の催事などによっても需要は変化する。AIシステムを導入する前は、本社の営業企画担当者が過去の実績を用いてメニューに応じて需要を予測。それを各個店に割り当てていた。そのデータを基に個店の店長などが中心となって補正し、食材を発注していたという。

 食材によってはその日に売らなければならないものもある。余ってしまえばフードロスにつながる。一方、人気商品なのに売り切れてしまえば販売機会の損失になる。しかし個店に赴任したばかりの店長や、経験の浅い店長が正確に予測するのは難しい。販促キャンペーンの内容や天候、周辺地域の催事など多様な要因がそれぞれ需要にどれだけ影響するかは店舗の特性によって異なる。

 こうした課題を解決すべくF&LCは新たな需要予測を行うAIシステムの開発に着手した。2021年3~10月にかけてPoC(概念実証)を実施。全店への導入を進めている。