2021年秋ごろから、「リスキリング」というキーワードが新聞をはじめ様々なメディアに取り上げられるようになり、その注目度はぐっと高まっています。注目度の上昇とともに、各企業でリスキリングを冠した施策が立案される頻度も高まっているようです。
筆者はパーソルイノベーションの法人向けオンラインコーチング「学びのコーチ」の事業責任者として企業のリスキリングを支援しています。リスキリングに関する企業からの問い合わせは日を追うごとに増えており、顧客企業の熱も高まっているように感じます。
本連載では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目指す企業はどのように社員のリスキリングを進めればいいのか、全体計画の立て方から現場を巻き込むコツまで詳しく解説します。第1回は、なぜ今、リスキリングが必要とされているのか、その背景にどのような経営課題や現場の問題があるのかを考えてみたいと思います。
「リスキリング」について
まずはリスキリングという言葉の意味についておさらいしておきましょう。リスキリングという言葉が世界的な共通言語になったのは、2018年の世界経済フォーラム年次会議(通称ダボス会議)から「リスキル革命」と銘打ったセッションが行われた頃だといわれています。
参照リンク: リスキリングとは - 経済産業省リスキリングの定義は、「スキル」に関するテーマを熱心に扱う米IBMの定義が分かりやすいです。以下に引用します。
リスキリング(Re-Skilling):
市場ニーズに適合するため、保有している専門性に、新しい取り組みにも順応できるスキルを意図的に獲得し、自身の専門性を太く、変化に対応できるようにする取り組みをリスキリング=Re-Skillingという。
なぜ今、リスキリングなのか
リスキリングへの注目度が高まっている背景には、DX推進が企業の共通テーマとなる中、DX人材の不足が深刻なボトルネックになっている点があります。
2~3年前までは、DX経験者人材を外部から採用することに困っている企業が多い状況でした。それが2021年時点では、社内でDX人材を育成することに課題の中心が移っているようです。
既にDXの取り組みをスタートさせた企業も増えています。DXの「最初の一歩」を踏み出す人材よりも、次の段階として現場で業務やサービスにデジタルを取り込める人材が求められている側面もありそうです。
経営主導のリスキリング施策のトレンド
今回はまず、全社レベルで取り組む経営主導のリスキリングのトレンドについてみていきましょう。例えば経営企画部や人事部、DX推進部などが経営陣の指示の下で施策を立案・推進するものです。
まずリスキリングの施策の傾向として、対象者が選抜者であるケースと全社員であるケースの2階建てが基本構造になっているパターンが多いです。企業によっては「デジタルをつくる人」「デジタルを使う人」などと分かりやすく表現する例もあります。選抜者だけでなく全社員のリスキリングを進める企業は、デジタル実装フェーズを意識した施策にしようという意図がありそうです。
さらに、リスキリングに求められる成果として「〇〇年までに〇〇人のDX人材を育成せよ」という目標を掲げるケースも少なくありません。これらはどのような施策なのか、もう少し踏み込んでみてみましょう。