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 テレワークに大きく傾いていたウィズコロナの働き方に対して、最近はテレワークと出社を併用する「ハイブリッドワーク」に取り組む企業が増えている。今回の「ITイノベーターズ会議」でも、エグゼクティブメンバー(幹事会員)らによるディスカッションを、オンライン会議ツール「Zoom」を用いたオンラインと、リアル会場の両方から参加できるハイブリッド形式で開催した。議論を通して、テレワークの課題のみならず、ハイブリッドワークの課題も浮かび上がった。

「ITイノベーターズ会議」のディスカッションの様子
「ITイノベーターズ会議」のディスカッションの様子
(撮影:井上 裕康)
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 「アイデアを生み出すといったことが極めて足りてないと思う」と切り出したのは、トラスコ中山で経営管理本部長兼デジタル戦略本部長を務める数見篤取締役だ。「アイデアを出すときは、社内のメンバーとのコミュニケーションだけではなく、外部のいろいろな取引先などとも会って対話しなければならない。ところが、この2~3年はほとんどできてないような気がする」という。

ITイノベーターズ会議(2022年3月開催)で議論した「ポストコロナの働き方」のポイント
ITイノベーターズ会議(2022年3月開催)で議論した「ポストコロナの働き方」のポイント
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 もちろん、テレワークが浸透したことを前向きに捉える意見もある。例えば、楽天グループの平井康文副社長執行役員CIO&CISOは「バーチャルの価値はすでに証明されていると思う」と話し、次のように続ける。「移動の時間を考慮する必要がなくなるなど、ミーティングの時間調整がしやすくなった。人や情報に偶発的に接する機会は減ったかもしれないが、フェーシングタイム(顧客と接する時間)は確実に増え、効果的に情報収集できると感じている」。実際、平井副社長は、午後1時に始まったITイノベーターズ会議の当日も会場に来る前までに、国内外にいるITパートナーの経営陣らと、オンラインで2件のミーティングを終えてきたところだった。

 海外の状況はどうか。三井物産の真野雄司執行役員デジタル総合戦略部長は「米国や欧州では今、RTO(リターン・ツー・オフィス)のステージに入っており、社員をオフィスに結構戻している」と説明した。「各国で事情が異なるためグローバルで一律にRTOということにはならない」としたうえで、「コラボレーションを深め加速するために、グローバルでオフィスに出社しようという方向にある」と話した。

 ディスカッションではこのほか、多くのメンバーから「テレワークと出社のどちらが優れているかといった議論はほとんど意味がない」といった声があがった。新型コロナウイルス対策としてのテレワークが企業に浸透し始めて2年ほどが経過し、テレワークへの過度な期待を捨て「実力」を冷静に見極めるフェーズに入ったといえそうだ。