ウクライナの戦場からの映像が連日、世界中に配信されている。それらの映像は、米Space X(スペースX)が構築した、人工衛星による通信網「スターリンク」を利用して配信されている。同社は、電気自動車(EV)で知られる米Tesla(テスラ)CEOのイーロン・マスク氏が設立した宇宙ビジネスを手掛ける企業だ。
ウクライナにとって大きな力となりつつあるスターリンクだが、本来は軍用通信システムではない。スターリンクは高度数百〜千数百kmの地球低軌道に多数の通信衛星を打ち上げ、地球上のどこでもブロードバンドのインターネットアクセスを提供するサービスだ。
初期段階で4425機、最終的には4万2000機の衛星から成る巨大システム
スペースXが2015年に計画を公表した時点では、4425機の衛星からなるシステムを予定していた。その時点で既に「システム完成時には1万機以上の衛星が打ち上げられている」という噂が流れており、実際に同社は18年、7500機余りの衛星を加えた1万2000機のシステムへと拡大すると発表。さらに19年には3万機の衛星を追加した合計4万2000機の巨大システムとする構想も明らかにした。
現状では第1段階である4425機のシステムを構築中だ。19年から衛星の打ち上げを開始。22年3月末までで2335機の衛星を打ち上げ、うち1608機が米連邦通信委員会(FCC)からサービスの認可を受けた高度540〜570kmの軌道でサービスを提供できる状態にある。20年8月に米国内でのベータテストを開始。22年3月末時点で、ウクライナを含む29カ国でベータテストを実施している。通信速度は公称150M〜500Mbps。ベータテストでは、ダウンロード100Mbps以上、アップロード15Mbps以上のネット接続が可能と確認されている。