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 凋落の続く日本の半導体分野で、経済産業省が復権に動きだした。熊本県への誘致が成功した、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の新工場がその皮切りだ。「日本企業にこだわらず、積極的に海外ファウンドリーを誘致する」という戦略で、復権はなるか。経産省 商務情報政策局 デバイス・半導体戦略室長の荻野洋平氏に聞いた(図1)。(聞き手=中道理、内田泰、佐藤雅哉、久保田龍之介)

図1 経済産業省 商務情報政策局 デバイス・半導体戦略室長の荻野洋平(おぎの・ようへい)氏
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図1 経済産業省 商務情報政策局 デバイス・半導体戦略室長の荻野洋平(おぎの・ようへい)氏
1980年生まれ。2005年に経済産業省入省。自動車産業、エネルギー政策などを手がける。2021年より、半導体などの国家戦略を検討するデバイス・半導体戦略室長に就任。(出所:荻野洋平氏)

2022年3月には、令和4年(2022)度経済産業省関連予算が成立しました。「半導体産業の基盤強化」に向けて、令和3(2021)年度補正予算と合わせると計8000億円投じるということですが、予算についての考え方を教えてください。

 われわれの目標は、「半導体の国内基盤を取り戻す」こと。この大きな目標に向けて、必要な対策はどんどん打っていきます。

 約8000億円という予算額は第1弾に過ぎません。30年には3倍の額にするくらいの勢いが必要です。3倍といっても、半導体需要から考えればわずかです。30年には世界の半導体売上高が、現状の2倍となる約120兆円になる見込みだからです。

 経済安全保障などの観点から、世界中で技術関係の摩擦が激しくなっています。製品をどこで作ってもよかった従来の状況から、「どこで作られているか」が重要になってきているわけです。そんな中で、経済安全保障上重要である半導体技術や製造拠点が国内になければならないのでは、という話が進んでいます。

 「半導体の製造基盤を国内につくり、安定的に供給できるようにする」ということがポイントです。日本企業の競争力強化が重点ではないので、外資系企業であっても良い。例えば、外資系企業に日本で事業を営んでいただければ、製造基盤が国内にできます。

その基盤を整備するために、日本としてどのような手段を講じるのでしょうか。

 経産省は3つのステップを設けています。すなわち、(1)半導体工場のサプライチェーン強化、(2)半導体プロセスの微細化や3D(3次元)実装、(3)光電融合技術の実装――です(図2)。

図2 経産省は3つのステップで「日本の半導体復権」を目指す
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図2 経産省は3つのステップで「日本の半導体復権」を目指す
令和3年度補正予算と令和4年度当初予算を合わせた額では、半導体産業の基盤強化に約8000億円が投じられている。そのほとんどを占めるのが、TSMC新工場の国内誘致である。設備投資額約1兆円の半分程度を補助することで、国内に半導体製造拠点を取り戻したい考えだ。なお、同工場は2024年に生産開始する計画で、22/28nmプロセスが中心となる。(出所:日経クロステック)

 まず(1)として、国内に半導体工場を新しくつくっていきます。令和3年度補正予算では、先端半導体の国内生産拠点の確保に6170億円を投じました。その一例が、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の国内誘致です。このステップを現在進めており、20年代の比較的早い段階に完了する予定です。

 TSMC誘致は、緊急的な措置です。日本で40nmプロセスぐらいから停滞していた半導体技術を、一足飛びに発展させようという計画です。

 初めは熊本県の製造拠点に1棟設けるという発表ですが、今後どれだけ規模を拡大できるかは経産省の努力次第だと思います。TSMCは他国での進出の例を見ても、1つのサイトに1棟の工場では終わっていない。どこの地域でも、必ず2棟、3棟、そして4棟とつくっていっているのです。周辺に何棟も工場をつくらなければ、ファウンドリーとしてはうま味がないということでしょう。

 経産省としては、この1棟目をしっかりと成功できるような環境整備に取り組むことが重要な方針の1つです。具体的には人材やエネルギーの安定供給、半導体製造に大量に必要になる水資源などです。2棟目、3棟目への投資を検討・決定しやすい状況をつくっていくというわけです。