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 米中の対立激化を受け、半導体チップメーカーや、半導体製造装置メーカーが、新たな製造拠点を東南アジアに探し始めた。中国という大消費地に近い上、労務コストが比較的安く、真面目で向上心が旺盛な優秀な労働者がいるためだ。中でも、「今後、半導体生産基地として大きな存在になりそうなのがマレーシアだ」とフロスト・アンド・サリバン・ジャパン 成長戦略ディレクターの杉原孝志氏は予測する。

 マレーシアは、半導体の後工程(パッケージング、テスティング)においては、米Intel(インテル)が大規模な工場を持つなど、既に世界の主要拠点の1つである。しかし、今後、後工程のみならず、前工程(半導体ウエハー処理工程)も含めた重要拠点として育ってくる可能性が高いという。

 杉原氏がそう考える理由は、2つある。1つは、大手半導体製造装置メーカーがこぞってマレーシアに工場を建てていること。もう1つはマレーシア政府の支援策である。

 まず、半導体製造装置メーカーについては、現在、マレーシアには、売上高世界1位の米Applied Materials(アプライド マテリアルズ)や、5位の米KLA、9位のオランダASM International(ASMインターナショナル)といった世界の大手が工場を持つ(表1)。これに加えて、2021年8月に、米Lam Research(ラムリサーチ)が、同社にとって世界最大規模の半導体製造装置工場を開設したことを発表した。同社は、世界第4位の製造装置のメーカーであり、半導体前工程に特化した薄膜形成やエッチングなどを提供する。「Applied Materialsに加えて、Lam Researchが来たことで、半導体チップメーカーが製造装置メーカーに直接サポートが受けられる体制が整い、進出しやすくなる」(杉原氏)。これらの大手製造装置メーカーを支える企業もマレーシアに進出してくることで、半導体製造拠点化が加速する可能性が高い。

表1 半導体製造装置の売上高ランキング
表1 半導体製造装置の売上高ランキング
(日経クロステック調べ)
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 マレーシア政府も、米中対立で移転先を東南アジアに求める半導体関連企業の投資を呼び込めるように、俊敏に動く。米中対立が深刻化する中で、マレーシア投資開発庁(MIDA)は、同国に進出する外資の製造業に対して大幅な税制優遇、投資控除措置を提供している。「ベトナムなどの近隣国も、類似の政策を採用しているものの、半導体産業の蓄積はあまりなく、政策的にも洗練されていないため、マレーシアに大きく遅れている状況だ」(杉原氏)

 加えて、知的財産権の保護に力を入れている点も大きい。例えば、世界知的財産機構(WIPO)が管理する6つの国際条約(ベルヌ条約、ニース協定、パリ条約、特許協力条約、ウィーン協定、WIPO条約)に加盟している。「知的財産権保護に対する国際的な評価も高く、米国通商代表部(USTR)の報告で、中国、インドネシア、タイが優先監視リスト、ベトナムが監視リストにそれぞれ入っている中、マレーシアは監視リスト外となっている」(杉原氏)