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 エネルギーには2つの柱があります。1つはグリーン電力で、もう1つはグリーン燃料です。グリーン燃料として今期待されているのは水素です。

 図1は、横軸が放出(リーク)期間を、縦軸が貯蔵量を示しています。再生可能電力の課題は安定性です。今後、再生可能電力が増えると、とても不安定になります。2018年に地震の影響によって北海道で起きたブラックアウトのような状態が起きないとは限りません。日本はスマートグリッドができていない情けない状態です。このまま何も手を打たないと停電する可能性があるのです。

図1 水素燃料への転換(水素社会実現への動向)
図1 水素燃料への転換(水素社会実現への動向)
(出所:Touson自動車戦略研究所)
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 これを避けるために、余剰電力を活用してエネルギーを貯蔵する方法があります。ところが、2次電池の貯蔵期間はせいぜい1週間で、貯蔵量もせいぜい100MWといったところ。しかも重く、大きく、高いという特徴もあります。これに対し、水素の貯蔵期間は1シーズンレベルで、10GWくらいまでの貯蔵が可能です。トラックで運ぶこともできます。こうした利点から、水素が注目されているのです。

 直接水素を使う場合もあると思いますが、水素をベースに水素と一酸化炭素(CO)から合成液体燃料(e-fuel)を、水素と窒素からアンモニアを、水素と二酸化炭素から合成メタンガスを造ることもできます。これらを生かせば、現在のインフラが全て使えます。クルマの燃料としても、ガソリンに混ぜてそのまま使うことができます。

 ところが、日本の再生可能電力では難しい。では、どうするか。海外で、しかもオフグリッドでグリーン燃料を造りましょうというのが、私の考えです。例えば、風力発電といっても別にグリッドにする必要はありません。海外で発電して水素や水素をベースとしたグリーン燃料を造るのです。そして、それを日本に運んでくる。従来の石油タンカーや天然ガスタンカー、アンモニアタンカーなどを使えるわけですから。こうした政策を日本政府には立ててほしいと思っています。

日本のグリーン電力化は困難を極める

 ここで、グリーン電力がなぜ難しいかという話をします。平地に設置されている太陽光パネルの比率は、日本は世界一です(図2)。崖崩れなどが起きそうな危険な場所(ハザードマップ域)に設置されている太陽光パネルは40%程度あります。しかも、ここ数年で土砂崩れなどによって15%が破壊されています。残りの設置場所は、休耕地と屋根ということになります。

図2 水素燃料への転換(水素社会実現への動向)
図2 水素燃料への転換(水素社会実現への動向)
(出所:Touson自動車戦略研究所)
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 風力発電については、海洋上に設置し、目標は2030年に10GWという話があります。これを聞いて私はとても驚きました。なぜなら、10GWというのは総電力のわずか2.2%にすぎないからです。2030年に再生可能電力の比率を38%にすると言っているのに、現状は18%なので、ここから20ポイントも増やさなければならないのです。にもかかわらず、風力発電は2.2%。ここでも、経済産業省の辻褄(つじつま)が合いません。

 図3に示す通り、日本ではセクターごとにさまざまな燃料を使っています。電力だけではなく、各セクターでいろいろな化石燃料を使用しているのです。これらの化石燃料をどのようにグリーン燃料やグリーン電力に変えていくか。これをタイムスケジュールを踏まえつつ、必要供給量がいくらで、それをどこから供給し、どこで製造するといった計画を作るのが経済産業省の仕事です。そして、産業界に従事する全ての人にこうしたことに興味を持ってほしいと思っています。

図3 各セクターを対象としたグリーンエネルギー
図3 各セクターを対象としたグリーンエネルギー
(出所:Touson自動車戦略研究所)
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