事業と業務基盤を共にデジタルの力で変革を――。パナソニックグループがIT企業流の改革に挑んでいる。2022年4月に移行した持ち株会社制度の下、改革の主力の1つと位置付けるのがサプライチェーンのデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を手掛ける事業会社パナソニックコネクトだ。AI(人工知能)をはじめとするソフトウエアの力を取り入れて伝統的なものづくりの力を強化。モノ売りから継続的に収益を得るリカーリングへと収益構造を見直し、さらにはグループ全体の変革の先兵になろうとしている。100年の歴史を持つ日本製造業の象徴は、デジタルの力でどう生まれ変わるのか。
「2年目のゴールに向けて、着実に進み始めている」。2022年4月1日、パナソニックホールディングス(HD)の楠見雄規社長は、自社グループ内で取り組むDXの手応えを語った。2年とは楠見氏がパナソニック(当時)の社長への就任決定後の2021年5月に打ち出した、「競争力を徹底的に強化する」(楠見氏)ための期間だ。
方針表明からほぼ1年が過ぎ、堅調に進んでいると楠見社長が自己分析したパナソニックグループのDX。具体的な取り組みの代表例が自らのモノづくりのデジタル変革だ。楠見社長は「現場革新」と表現する。「改善思想とデジタル技術により、サプライチェーン全体のオペレーション力を強化する」(同)。伝統的なモノづくり企業としての地力を、デジタルの力で鍛え直すわけだ。
現場革新は顧客向け事業の競争力を高める土台でもある。自社における成果を基に、顧客向けのSCM(サプライチェーン管理)システム事業を強化する。「(製造や物流の)現場にいる人が特別な知識を持たずとも、無駄と滞留を無くせるようにする。そのために各種のデータを分析、収集、活用し、(顧客企業の)サプライチェーン全体の最適化や効率化に貢献する」(同)。
ソフトウエアの力で成長を
製造業としてのモノづくり現場のデジタル変革を進めて収益性を高め、成果を基に顧客企業の現場改善を支援して収益を拡大する。自社と顧客双方のサプライチェーンのデジタル変革を、先頭に立って率いるのが事業会社の1つであるパナソニックコネクトだ。生産や物流、小売り向けの機器やソフトウエアの開発から販売、施工、保守までを手掛ける。