DX(デジタル変革)をけん引する技術として存在感を高める人工知能(AI)。その中核となる機械学習モデルは一度つくって導入すれば終わりではなく、継続して育てることが重要だ。それには、運用保守フェーズで継続的に改良する「MLOps」という取り組みが不可欠である。具体的にどういう組織体制、開発・保守標準、基盤・ツールを整えればよいのか。先行事例や有識者の提言を基に探る。
「当社が開発・運用している機械学習(ML)モデルは一覧化して把握しており、現在20~30個ほどある」。クボタの古谷嘉三グローバルICT本部DX推進部部長は同社のMLモデルについてこう語る。
クボタは大きく分けて3つの分野でMLモデルを活用している。1つ目は品質で、工場のラインを流れる製品の画像から不良品を検出するモデルを運用している。残りの2つはローンを組むなどの小売金融関連の業務に関するモデルと、必要な台数のトラックを手配するモデルである。古谷部長は「MLモデルによる成果が少しずつ見えてきているところだ」と話す。
米マイクロソフトと提携
クボタは米Microsoft(マイクロソフト)と提携し2020年に「AI Machine Learning Labプロジェクト(AI ML Labプロジェクト)」を立ち上げた。日本マイクロソフトから支援を受け、クボタにおけるMLの取り組みを一覧にしてまとめている。クボタ側はMLエンジニア5人が在籍するDX推進部が中心となって活動している。
AI ML LabプロジェクトはMLモデルの開発だけでなく運用保守も担う。運用保守フェーズに入った後、予測精度をリアルタイムにモニタリングしているモデルもあるという。ML案件ごとに精度のしきい値を設定し、それを下回ったらモデルを再トレーニングする。