機械学習(ML)モデルは本番稼働させた後、精度が下がっていくケースがある。そこでAI(人工知能)によるDX(デジタル変革)で先行する企業の間では、MLモデルを継続的に改良する「MLOps」に取り組むケースが相次いでいる。AIをビジネスに活用するうえでMLOpsは必須だ。
SUBARU(スバル)はMLモデルを中核とした運転支援システム「アイサイト」を、自社製車両に搭載している。アイサイトの搭載車を最初に発売したのは2008年だ。2020年発売の新型レヴォーグや2021年発売の新型レガシィ アウトバックに搭載している最新版のアイサイトは第4世代に当たる。
アイサイトの成果は数字に表れている。スバルが交通事故総合分析センターのデータを基に、2020年に発表した資料によると、第3世代のアイサイトを搭載した車両の追突事故発生率は0.06%だ。第2世代の0.09%に比べると3分の2に低下した。
スバルは2018年7月に発表した同社の中期経営ビジョン「STEP」で、SUBARU車に乗車中の死亡事故や、SUBARU車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故を2030年にゼロにするという目標を掲げ、MLモデルの開発・改良に力を注いでいる。
2020年12月には東京・渋谷に、アイサイトに組み込むAIなどの研究開発拠点である「SUBARU Lab(スバルラボ)」を開設した。これまでアイサイトの研究開発で培った知見を基に、数十人規模のチームが中心となって次世代のアイサイトを開発中だ。次世代のアイサイトには深層学習の技術を新たに取り入れることを目指しており、さらに精度を高める。
2020年から自動化に取り組む
スバルがMLモデルの開発を加速するうえで力を入れているのがパイプラインによるプロセスの自動化だ。これはMLOpsの重要な要素の1つである。
アイサイトのMLモデルについては、車両を出荷した後に更新していくわけではない。基本的にアイサイトのソフトウエアの更新は不具合の修正に限定している。そのためアイサイトのMLモデルのパイプラインは開発環境のみだ。一般的なMLOpsとは性格が異なるが、同社のパイプラインによる自動化は参考にする価値が高い。