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 「収益は回復軌道に乗っている」。三菱自動車は2022年5月10日、21年度(21年4月1日~22年3月31日)の連結決算を発表した(図1、2)。売上高は2兆389億円(前年度比40.1%増)、営業利益は873億円(同1826億円増)、売上高営業利益率は4.3%(同10.8ポイント増)、販売台数は93万7000台(同13万6000台増)だった。

図1 2021年度の連結決算を説明した三菱自動車代表執行役副社長〔CFO(最高財務責任者)〕の池谷光司氏
図1 2021年度の連結決算を説明した三菱自動車代表執行役副社長〔CFO(最高財務責任者)〕の池谷光司氏
(出所:三菱自動車の決算発表会見のオンライン画面をキャプチャー)
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図2 三菱自動車の21年度連結決算の概要
図2 三菱自動車の21年度連結決算の概要
(出所:三菱自動車の説明資料)
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 同社は、為替の追い風に加えて、販売台数の増加、値引き抑制効果、コスト改善効果が営業利益の回復につながったとみている。営業利益の前年度に対する変動要因は以下の通りだ(図3)。

図3 営業利益の変動要因分析
図3 営業利益の変動要因分析
(出所:三菱自動車の説明資料)
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 まず、販売台数と販売構成(MIX)・売価については、主に北米、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア・ニュージーランド(豪州・NZ)の販売台数の増加や、各国における販売の質の改善施策が奏功し、合計で757億円好転した。販売費用に関しては、広告宣伝費は新型車の発売に計画通り投入したが、年度を通じた対策金の抑制効果によって203億円の好転につなげた。

 コスト低減などの点では、原材料価格の高騰が続く中、コスト低減活動を計画通り進めることによってその影響をある程度相殺した。さらに、操業の正常化に伴う工場経費の改善もあり、23億円の好転となった。構造改革による効果は、減価償却費や間接員労務費の抑制によって230億円のプラス。研究開発費は、第3四半期から徐々に増加したが、累計で21億円の好転となった。その他、主にアフターセールス損益の改善などにより、54億円のプラス効果があり、さらに為替については、円安傾向が持続しており、538億円のプラス要因となっている。

 販売台数については、同社が主力とするASEANでは、前年度比32%増の25万台を販売した。ASEAN各国の政府がゼロコロナからウィズコロナへ政策を転換したことによって行動制限が段階的に緩和され、21年末から需要の回復に転じた結果とみている。豪州・NZでは、諸活動が制限される中で資金を新車購入に充てる世帯が増加し市場全体が好調に推移した。部品不足の影響が比較的少なく供給が順調な種別の拡販や新型SUV(多目的スポーツ車)「アウトランダー」の好調な販売によって、同35%増の9万7000台を販売した。

 日本では、半導体不足によって供給が限られる中、在庫車の販売への注力や新型SUV「アウトランダーPHEV」の好調な立ち上がりによって、同3%増の7万5000台の販売を確保した。北米は、21年4月から販売を本格化した新型アウトランダーが年度を通じて好調に推移し、同38%増の15万6000台を達成した。

 一方、モデルサイクルの過渡期にあった中国(中国以外も一部含む)では、8万1000台(同23%減)と販売は低迷した。同社にとって事業再編中の欧州は、同9%減の13万1000台だった。ピックアップトラック市場の回復が見られるその他地域(中南米、中東、アフリカなど)は、同40%増の14万7000台と好調だった。