トヨタ自動車は、資材価格の高騰が2023年3月期の営業利益を1兆4500億円引き下げると試算した。これにより、過去最高を記録した22年3月期の業績から減益に転じると予想する。
資材価格高騰の影響とする1兆4500億円について、トヨタ副社長で最高財務責任者(CFO)の近健太氏は「過去に例がないレベル。22年3月期の6400億円も過去では一番大きかったが、その2倍以上と非常に大きな影響だ」と、22年5月11日に開いた決算会見で説明した。
損益分岐台数は40%減
トヨタの22年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前期比15.3%増の31兆3795億円で、営業利益が同36.3%増の2兆9956億円だった。いずれも過去最高である。トヨタはこの結果を、「単年度の実績だが、これまで収益構造の改善に取り組んできた結果」(同氏)と受け止めた。
注目すべきは、損益分岐台数の推移だ。近氏によると、「リーマン・ショック時(の09年3月期)を100とすると、足元では60~70まで収益分岐台数を下げられた」という。原価改善では例えば、トヨタの車両設計・開発手法「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づくプラットフォームの導入によって、開発効率の向上や部品の共通化によるコスト低減などを進めた。
トヨタはリーマン・ショック以降、13年間をかけて収益体質を見直してきたことで、原価改善効果として年間3000億円を見込めるまでになった。それでも、資材価格の高騰による影響は大きく、これまでの取り組みだけでは対処できない状況になってきた。
同社が部品メーカーと交わす取り決めとして、「材料価格は原則としてトヨタが負担するというルールがある」(近氏)。足元の相場に照らし合わせてトヨタの負担額を試算した結果が1兆4500億円という数字だった。
トヨタ副社長で最高技術責任者(CTO)の前田昌彦氏は、資材価格の高騰の影響は、「特に電気自動車(EV)で大きく出やすい」と分析する。EVコストで大きな割合を占める電池を「直撃する」(同氏)ためだ。