収益の確保で苦しんできたホンダの四輪車事業に、改善の兆しが見えてきた。同社専務の水野泰秀氏は2022年5月13日に開いた21年度通期(21年4月~22年3月)の連結決算会見で、「生産能力に対して80%の販売台数で利益が出るようになった」と明かした。ただし、22年度通期(22年4月~23年3月)は原材料価格の高騰が改善に水を差しそうだ。
同社副社長の竹内弘平氏によると、22年度は「原材料価格(の高騰)に加えて、船舶による輸送費の値上げ要請や人件費の上昇などにより、2900億円近いコスト増になる」という。21年度は、貴金属や鋼材といった原材料の価格高騰が約2700億円の減益要因となった。
マイナス影響「完全には打ち返せない」
ホンダが同日発表した21年度通期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年度比10.5%増の14兆5526億円だった。営業利益は同32.0%増の8712億円で、売上高営業利益率(以下、営業利益率)は6.0%となる。
このうち四輪車事業は、売上高が同6.6%増の9兆3605億円で営業利益が同161.7%増の2362億円だった。世界販売台数(グループ販売台数)は同10.4%減となる約407万台にとどまったが、営業利益率は2.5%と、20年度(20年4月~21年3月)の1.0%から持ち直した。
ホンダは四輪車事業の利益率向上について、値引きの原資となるインセンティブ(販売奨励金)の抑制や為替影響などに加えて、「これまで取り組んできた四輪車事業の体質改善が奏功した」(水野氏)と受け止めた。
具体的には、固定費の圧縮やグローバル車の派生数の削減、新型「シビック」から適用を開始した同社の新プラットフォーム「ホンダ・アーキテクチャー」の採用拡大などを進めた。これにより、「原材料価格の高騰や半導体不足といったコスト増の要因をカバーできた」(竹内氏)という。
それでも、「2年連続で3000億円近い減益要因となるとなかなか厳しい」と竹内氏は本音も漏らす。体質改善やサプライヤーとの原価低減活動、車両価格の値上げなどを続けるが、マイナス影響を「完全には打ち返せない状況になってきた」(同氏)。