2022年5月、三重県四日市市の笹川環状1号線で分断されていた2つの公園をつなぐ歩道橋が架かった。「笹川パークブリッジ」だ。らせん状の斜路付き階段を2周回って上り下りする。その形状から地元の子どもたちからは、“ぐるぐる階段”という愛称で親しまれている。
歩道橋を通学路に利用している児童が通う四日市市立笹川小学校の奥山充人校長は、次のように話す。
「笹川地区にはこれまで歩道橋がなかったこともあり、みな喜んでいてる。段差が低く上り下りしやすいようだ。子どもたちは、『ぐるぐる階段から行こか』などと声をかけ合って、元気に使っている」
実はこの橋、津市の国道23号に架かっていた江戸橋横断歩道橋を移設したもので、ほぼそのまま再利用している。歩道橋を別の場所で供用するケースは全国でも珍しい。
四日市市郊外の笹川地区では、団地内の2つの小学校が統合し、19年に笹川小学校として開校することが決まっていた。児童は団地内を通る笹川環状1号線を横断して登下校することになるため、17年には地域から市に、通学路として歩道橋を設置する要望が出されていた。
「笹川環状1号線は4車線道路で横断距離が長く、交通量も多い。県が手掛ける環状1号線の延伸事業により、交通量の増加が予測される。加えて横断する歩行者が増える見込みで、早期の安全対策が求められていた」。四日市市都市整備部道路建設課の黒石大智氏は、こう説明する。
歩道橋の再利用のきっかけは、タイミングが合ったためだ。三重県の河川改修事業による市道と国道の付け替えに伴い、津市にある江戸橋横断歩道橋の撤去事業が同時期に動いていた。
撤去工事を担当した国土交通省中部地方整備局三重河川国道事務所の藤原弘典副所長は、こう振り返る。
「車通勤の増加などで、近年は歩道橋の利用者が日に80人ほどまで減っていた。撤去に先立ち、歩道橋のリサイクルやリユースを前提に、県や周辺管内の市に再利用の意向を照会した」
そこで17年7月に手を挙げたのが、四日市市だった。