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 自動車部品メーカーでもV2X(Vehicle to Everything)通信関連の技術開発や実証実験に積極的な企業は少なくない。例えば、ドイツBosch(ボッシュ)では、クラウド-車両間(Vehicle to Network、V2N)通信による情報提供でも必要とされる、動的情報をひもづけられる地図を、実際に路上を走っている車両から情報を集めて作成する取り組みをドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)と共同で進めている注1)

注1)VWの車両に搭載したボッシュ製の車載センサーで取得したデータをVWのサーバーに上げて、それをボッシュのサーバーに転送する。そこで、高精度地図を作成・更新し、その地図情報をVWのサーバー経由で車両に配信している。トヨタがNTTグループと共同の実証実験の中で実施した、静的地図の作成と近い取り組みである。

 また、ボッシュは、インフラ協調を用いた自動バレーパーキングの商用適用に向けた取り組みも、ドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)などと共同で進めている。ドイツのシュツットガルト空港のP6駐車場で実証実験を行っている(図1注2)

図1 ボッシュなどが実施した自動バレーパーキングの実証実験の様子
図1 ボッシュなどが実施した自動バレーパーキングの実証実験の様子
シュツットガルト空港のP6駐車場で実施したもの。インフラ協調により、狭い傾斜路も含めて駐車場内を走行でき、異なる階への移動も可能という。(写真:ボッシュ)
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注2)インフラ側に設置したのは、ボッシュ製のステレオカメラと、無線機、サーバーなど。同サーバーを介してクラウドと接続することでデータを処理する。インフラ側からは自動運転車に、制御の目標値となる車速や曲率などの情報を送っている。自動運転車には、無線機や自動バレーパーキングのための機能を搭載したメルセデス・ベンツの新型「Sクラス」を使う。こうしたインフラ協調により、自動運転車は狭い傾斜路も含めて駐車場内を走行できるようになり、異なる階への移動も可能になっているという。

 V2X通信を利用した協調型システムにおいて重要となる自車位置測位の精度向上に取り組んでいるのがアルプスアルパインである。例えば同社は、自車位置測位の精度を補正情報なしで50cmと高めたGNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)モジュール「UMSZ6」シリーズを古野電気と共同で開発した。両社によれば、これは車載向けとしては世界初のもので、2023年中の量産開始を目指している。またアルプスアルパインでは、トンネルや屋根付き駐車場などGNSSの受信が困難な環境下でも、自車位置を低コストかつ高精度に測位できるシステム「ViewPose」の開発を、米Qualcomm Technologies(クアルコムテクノロジーズ)と共同で進めている注3)

注3)同社は21年2月に、5.9GHz帯におけるセルラーV2X(C-V2X)実験試験局免許を国内で初めて取得。同社いわき事業所で、ViewPoseの高精度な位置情報を用いて同社が開発しているC-V2Xシステムの実証実験を開始している。同社では、C-V2Xに対応した通信モジュールの開発も手掛けており、C-V2Xの導入で先行する中国市場に向けて量産を開始している。

 V2X通信の路側機向けの技術を開発しているのが、京セラやOKIである。両社は、様々な実証実験のプロジェクトに参加するなどして、そうした技術の蓄積を進めている。

 例えば、京セラは21年、関西電力送配電など5社と共同で、兵庫県姫路市においてインフラ協調を利用した路線バスの安全運転支援に関する実証実験を実施している注4)。見通しが悪い交差点を対象に、電柱1本当たりに3台のカメラを設置し、交差点の右や左から近づいている歩行者や自転車の存在をバスの運転者に早めに知らせる効果を実証により確認した(図2、3注5、6)

注4)関西電力送配電(大阪市)、京セラ、神姫バス、パナソニックシステムネットワークス開発研究所(仙台市)、フジクラ、マゼランシステムズジャパン(兵庫県尼崎市)の6社で実施した。
図2 京セラなどが実施した兵庫県姫路市の実証実験で電柱に設置した路側機
図2 京セラなどが実施した兵庫県姫路市の実証実験で電柱に設置した路側機
センサーとしては電柱1本当たりに遠距離/中距離/短距離の3台のカメラを設置している。遠距離と中距離は赤外線カメラ、短距離は可視光のカメラを使っている。赤外線カメラは、夜間や霧などの悪天候にも強い。(写真:京セラ)
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図3 バスの運転者からは見えない交差点で路地から接近してくる歩行者の存在を知らせる
図3 バスの運転者からは見えない交差点で路地から接近してくる歩行者の存在を知らせる
歩行者が交差点に進入する約9秒前に運転者に通知することで事前に減速できるように支援する。(写真:京セラ)
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注5)通知がないとブレーキが遅れて衝突してしまいそうなケースでも事故を回避可能だった。1つの課題は、狭い路地がたくさん交差する道路では、歩行者や自転車の接近をあまり早い時点に通知すると、どの交差点に関するものか分かりにくくなってしまうこと。この実証実験では、骨伝導式のヘッドセットを用いて音声で通知したが、交差点間の距離が近いところではカーナビゲーションシステムの地図と連動させるなどの工夫が必要という。
注6)京セラが同実証実験において路側機として提供したのは、カメラと無線機の一部である。無線機は760MHz帯のものと限定的だった。だが、同社が目指すのは、スマートポールと呼ぶWi-FiやBluetoothなど様々な通信プロトコルに対応可能な路側機である。Bluetoothはスマホにおいても普及していることから、デバイスのコストを抑えられる上、歩行者や自転車にスマホを介して警報を送るといった使い方も期待できる。

 OKIでは、総務省からの受託で、5.9GHz帯における電波干渉を測定する取り組みを21年12月~22年2月に実施している注7)。また、18年には日産自動車やドイツContinental(コンチネンタル)などと共同でセルラーV2X(C-V2X)に関する実証実験を行っている注8)。前者の電波干渉の測定では、5.9GHz帯を使う放送や、近接の5.8GHz帯を使うETC2.0との干渉を調査した。そのために開発したのが5.9GHz帯を対象とするアンテナ/無線機の基礎技術である。同社は今後それを活用していく考えとしている注9)

注7)総務省からは「5.9GHz帯への狭域通信方式によるV2Xシステムの導入に係る技術的検討の請負」という形式で受託している。
注8)日産、OKI、コンチネンタル、NTTドコモ、スウェーデンEricsson(エリクソン)、クアルコムテクノロジーズが共同で実施した。
注9)OKIは、V2X通信向けとしては他に、屋外に設置できるエッジコンピューティグ向けデータ処理装置を開発している。