Part1ではITに関する国家試験の入り口となる「ITパスポート試験」と「基本情報技術者試験」について詳しく紹介する。長年にわたって、試験の対策講座で講師を務めてきた筆者の経験から、この2つの試験を受ける意義から具体的な試験内容、合格するための効率的な勉強方法までをアドバイスしよう。
まずは合格のメリットを知る
試験に合格するために最も重要なのは「合格したい」という強い意志を持つことだ。そのためには、試験に合格する意義を理解するのが早道だろう。
ITパスポート試験と基本情報技術者試験は、ITに関する国家試験だ。試験に合格すると、ITの専門知識や技能を持つことを対外的に示せ、合格者にも自信が芽生える。これによって、新たな業務を始めるためのチャンスが得られる。つまり、試験に合格すれば、世界が変わり、自分も変わる。これが、試験に合格することの大きな意義だ。
経済産業省が定めているITSS(IT Skill Standard、ITスキル標準)をご存じだろうか。これは個人のIT関連能力を体系化した指標で、7段階のレベルがある。図1は、ITSSの段階、人材像、判定方法の概要をまとめた表だ。
ここで注目したいのは、ITパスポート試験に合格すれば、最低限必要な基礎知識を持つ「レベル1」と判定されることだ。これにより、IT人材としてのキャリアアップをスタートできる。さらに、もう一つ上の基本情報技術者試験に合格すれば、基本的な知識に加えて技能も備える「レベル2」と判定され、上位者の指導の下でより高度な業務をこなせるようになる。
IT企業に限らず、さまざまな企業が若手や中堅社員にITパスポート試験を受験させている。これは、試験に合格することで、社内のIT人材としてキャリアアップをスタートしてほしいからだ。一方、多くのIT企業では、新入研修の期間中に基本情報技術者試験を受験させている。これは、配属後に上司の指導の下で情報処理技術者の一員として、ITにまつわる業務をスタートしてほしいからだ。
問題の構成と配点
試験に合格する意義を知り、「合格したい」という強い意志を持ち、受験することを決意したなら、相手を知ることから始めよう。相手の手の内を知れば、必ず倒せる(合格できる)。図2と図3に試験の問題構成と配点を示した。
ITパスポート試験は、ストラテジー系35問、マネジメント系20問、テクノロジー系45問から構成され、全100問となる。制限時間120分で、100問に解答する。IRT(Item Response Theory、項目応答理論)という採点方式のため、配点は公開されていない。全体で1000点中600点以上かつ各分野が1000点中300点以上で合格なので、全100問中の60問以上の正解を合格の目安とするとよいだろう。多くの受験者が「時間が余った」と言っているので、制限時間の心配は無用だ。
基本情報技術者試験には、午前試験と午後試験がある。午前試験は、テクノロジー系50問、マネジメント系10問、ストラテジー系20問の全80問になる。制限時間150分で、配点は、各1.25点だ。
午後試験は、情報セキュリティ1問、テクノロジー系3問、マネジメント系/ストラテジー系1問、データ構造およびアルゴリズム1問、ソフトウエア開発5問から構成されている。情報セキュリティ(20点)とデータ構造およびアルゴリズム(25点)は、解答が必須であり、テクノロジー系/ストラテジー系とマネジメント系は4問中2問(各15点)を選択し、ソフトウエア開発は5問(C言語、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフト)から1問(25点)を選択する。午前試験と午後試験の両方が60点以上で合格となる。多くの受験者が「午前試験は時間が余ったが、午後試験は時間が足りなかった」と言っているので、午後試験で60点以上を取ることが合格への鍵となる。