各国政府がWeb3への取り組みを相次いで表明し、大企業の参入も相次いでいる。一方で、Web3が抱える様々な課題も見えてきた。特集第3回では、Web3の現状と課題を掘り下げていく。具体的には「各国政府がWeb3への取り組みを相次いで表明しているのはなぜ?」「どんな企業がWeb3に取り組んでいるの?」「Web3の今後の課題は?」の3つの疑問を取り上げる。
【疑問8】各国政府がWeb3への取り組みを相次いで表明しているのはなぜ?
【答え8】次世代のインターネットであるWeb3にいち早く取り組むことで、国の競争力を上げる狙いがある。
Web3に対しては、各国政府が「国として取り組む」という姿勢を鮮明にしている。
真っ先に動いたのが米国だ。2022年3月、ジョー・バイデン大統領がデジタル資産の技術革新を促す大統領令に署名した。ホワイトハウスが中心になって、暗号資産(仮想通貨)をはじめとするデジタル資産に関する政策を検討する。具体的には、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の研究の加速などを求めている。
自民党の「NFT政策検討PT」の座長を務め、Web3に詳しい平将明衆議院議員は、この大統領令を「Web3の世界は米国がリーダーシップを取りにいくと宣言しているに等しい」と捉える。
英国も動いた。英財務省は2022年4月、暗号資産分野の成長に向けた取り組みを公表した。価値が法定通貨に連動するデジタル通貨「ステーブルコイン」を新しい決済手段として使えるよう規制などの環境を整えるという。王立造幣局がNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を発行することも検討する。またフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、Web3で欧州がリーダーシップを取る重要性について言及している。
日本ではNFT政策検討PTのメンバーが2022年4月、岸田文雄首相にWeb3について説明し、日本の成長戦略の柱に据えることを提言した。今後、具体的な政策にどのように反映されるかはまだ分からないが、少なくとも岸田首相は「すごく好感触だった」(平議員)という。
同PTが公表しているホワイトペーパー案では「わが国は経済政策におけるWeb3(同案の表現ではWeb3.0)やNFTの位置付けを定められておらず、政策の検討・推進を指揮する責任者も決まっていない」と指摘。Web3を担当する大臣を置き、政治が責任をもってWeb3時代の国家戦略を策定・推進する姿勢を明らかにするよう求めている。
こうした各国政府の積極的な取り組みは、Web 2.0の時代にはあまり見られなかったものだ。Web3が、いかに社会全体に対するインパクトの強い技術であるかが、この点からもうかがえる。