2022年1月に、国土交通省土佐国道事務所の道路改良工事で初めて、建設3Dプリンター製の集水升が設置された。これを皮切りに、22年はあちこちの公共工事で印刷造形する計画が動き始めている。スタートアップ企業のPolyuse(ポリウス、東京・港)によると、20~30件で実装される。
建設3Dプリンターで造形した本設構造物を公共工事で初めて設置した──。日経クロステックでも報じたこのニュース。高知市に本社を構える入交建設とポリウスによる快挙を受け、それに続けと言わんばかりに地方の会社がこぞって建設3Dプリンターによる造形物の実装を試みている。
設置したのは集水升だ。神奈川県鎌倉市にあるポリウスの工場で、印刷造形した。門形クレーンでノズルを移動させながらモルタルを連続的に吐出して積層し、構造物を造形していく。
入交建設の現場では、3Dプリンターで造形した集水升の据え付けによる工期短縮効果を検証した。通常は型枠を組み立ててから打設、養生を含めて、6~8日を要する。一方で、3Dプリンターを使えば、型枠の組み立てが不要になり、養生期間を縮められる。
ポリウスの大岡航代表取締役COO(最高執行責任者)は次のように話す。「工事を実施する前と実施した後で、建設3Dプリンターに対する建設関係者の意識が180度変わった気がする」。これまでの「職人の仕事を奪う」といったネガティブな意見から、生産性向上などポジティブな意見に変わってきた。
入交建設との現場実装をきっかけに、複数の建設会社から問い合わせが寄せられた。社員数60人程度の入交建設でも建設3Dプリンターを公共工事に導入できたことが、「自分たちでもできる」という思いを奮い立たせた可能性がある。
ポリウスによると、22年夏ごろには中部地方で擁壁を、近畿地方で縁石をそれぞれ3Dプリンターで造形、設置する工事が決まっている。どちらも国交省の工事だ。
「22年の公共工事において、建設3Dプリンターで造形する予定の案件は20~30件ほどある。建設3Dプリンターを実用する元年に当たるのではないか」(大岡COO)